スリップサインは目安ではなく違反レベル
ご存じの通り、オートバイのタイヤの溝が0.8mm以下になったことを知らせる「スリップサイン」は、道路運送車両法で定められたトレッド溝の深さが最低限になったことを示すものだ。
つまり、スリップサインが露出した状態での走行は整備不良車として取り締まりの対象となる。スリップサインは交換の目安ではなく、走行前点検でライダーがタイヤトレッドの残溝に注意をはらい、スリップサインが出る以前に交換しなければならないと認識しておくべきなのだ。
フロントはまだ使えるのに……
こんなことは無いだろうか。気が付けばリヤタイヤの摩耗が進んできた、今度の休日にタイヤを交換か。でも、前輪はまだ溝があるな。
とはいえ、せっかくの休日。その時間はオートバイを走らせる至福の時間に使いたい。タイヤ交換への時間、そしてコストを考えると、後輪だけでもよいのでは。そう悩んだ経験は多くのライダーが持つのではないだろうか。
後輪が交換時期を迎えたということは、前輪のトレッドに残溝があったとしても新品時より摩耗していることは間違いない。交換してパフォーマンスが100%になった後輪と、ややパフォーマンスダウン期をこれから迎える前輪。ブレーキングによる段付き摩耗が現れ出す時期とも重なるかもしれない。ますます悩む。
しかし後輪だけ交換しようとショップで調べてみたら、すでに次世代の新しいシリーズしか在庫がなかったとする。そうなると前後の特性の違いが大きく生じるため、後輪だけ履き替えるのは避けて前後同時交換がお勧めだ。
新しいセットで100%のパフォーマンスを楽しむ。これはライダーにとって変化を楽しむ絶好のチャンスでもあるからだ。特に新しいタイヤが持つ進化はライディングの楽しさを拡大し、休日の時間をさらに充実させてくれる。是非、タイヤのプロショップで使い方、走り方、タイヤの情報を取り入れつつタイヤ交換へのアドバイスをもらおう。タイヤ交換はバイクライフを拡げる好機。そう捉えて楽しんでいただきたい。
溝の深さより大事な劣化のチェック
交換後の走行距離とトレッドの摩耗の進捗は交換をする目安のひとつでしかない。トレッド溝はまだしっかり残っている場合でも、例えばオートバイの保管状況によっては、タイヤが経年劣化する場合がある。
2年で2,000km、1カ月あたりでならすと100km足らず。もちろん、3カ月走らない期間があったり、一泊二日のツーリングで1,000km近く走ることもあったかもしれない。大切なのはタイヤの状況を注意深くチェックすることだ。
たとえばタイヤのサイドウォールやトレッドに細かなヒビやキズはないか、空気の減少がいつもより早まっていないかなどで、タイヤの劣化を確認できる。走行時の摩耗以外にも紫外線、気温差などでゴム質が劣化してゆくもの。トレッドゴムを触って新品の時のようなしなやかさはあるだろうか? 硬くなっていないだろうか。
そんな兆候や不安があったら、タイヤショップなどで是非相談を。同時にエアバルブの劣化もチェック。同じようにヒビやキズがあれば経年劣化だと考えよう。タイヤの溝はたっぷり、でもエアバルブが劣化したことで走行中に一気に空気漏れが発生!ということも想定できる。
人気の高いスポーツツーリングセグメントのタイヤは定期的に進化し、その乗り味にさらなる楽しさ、さらに安心感を加えて登場する。
そのサイクルは数年というのが通例なので、大好きなバイクを短期集中で楽しむためにも「乗らないけどタイヤ交換をする」は、最新タイヤとともにバイクライフを堪能する大切なスパイスとなるだろう。
もちろん、タイヤ交換まで最高の性能が維持できるタイヤを選ぶのも大切な選択肢。そしてタイヤ交換の際、エアバルブの交換も忘れずに。
愛車のタイヤを定期的にチェック、交換することでもっとバイクライフを楽しもう!