最小肉厚2.5mmも可能にした金型鋳造の革新で乾燥重量162kgと高剛性を達成!

ヤマハは2002年9月の「インターモト・ミュンヘン」で2003年型のYZF-R6(5SL)を発表、翌年からヨーロッパを主体に販売をスタートした。
YZF-R6は1998年の初登場以来、最も需要の多い600ccクラスのスーパースポーツとして高い評価を獲得、マイナーチェンジを経てこのモデルで3世代目。
ヤマハはこのクラスにはFZS600という人気のツーリングスポーツがあり、このR6進化と併行してFZ6-NとFZ6-Sへとアルミ・ダイキャストフレームへの進化も果たしたが、R6ではトップパフォーマンスへの適応を狙ったより高度なオールCFダイキャストによるシャシー構成へ挑戦していた。

その狙いはヤマハが誇るスーパースポーツとしての卓越したコーナリング。
デルタBOXフレームという、アルミ鋼板を熔接した曲面の構成でエンジンのカタチを避けたりすることなく剛性バランスが得られるメリットを築いてきたが、この自在な剛性バランスをダイキャスト鋳造で肉厚まで詳細に管理する製法でさらに高めたのだ。


先ずエンジンは従来のR6をベース(ボア×ストロークが65.5mm×44.5mmの599cc)としながら、クランクシャフトからクランクケースに至るあらゆる箇所で進化をはかり、最高出力は86.0kW(117HP)/13,00rpm、最大トルクが66.4N・m(6.78kgf・m)/12,000rpm(ドイツ向け仕様)とパワーアップ。
シリンダーをライナーへのメッキ処理から、ダイキャスト製シリンダー内壁に直接メッキする加工で、高い硬度など高精度による摺動抵抗の低減をはじめ放熱性でもメリットが得られた。
さらにクランクケースも各気筒間の通路を拡大して、ピストン往復のポンピングロス低減をはかるなど、レーシングエンジン開発と同レベルの創意工夫も加えられている。


インジェクションでも'02型YZF-R1から継承した負圧差で作動するフリーピストンの利用で、低回転域の流入速度からリニアなスロットルレスポンスを得て、8,000rpmからの12,000rpmを過ぎても二次曲線的なダッシュが体感できる特性へとチューン。
吸気系のエアクリーナー容量アップや、走行風を採り入れるエアダクトの取り回しにスロットルボディ口径アップまで、積み上げたノウハウの集大成を注ぎ込んだ。

日本ではXJやXJRといった、トラディショナルなネイキッドがメジャーな存在だったが、ヨーロッパではコンサバでも新しさを感じさせるスポーツバイクのデザインが求められ、他の日本メーカーに対しほどよい斬新さが好評だった。

メインフレームはデルタボックスIIIフレームと呼ぶ新世代で、積み重ねたキャスティング技術から熔接個所を16から2箇所まで大幅削減、強度と剛性バランスの完成度を一気に高めた。
さらにはスイングアームとリヤフレームも、CFアルミダイキャスト技術(金型に高圧で溶湯を注入する際に酸化物を巻き込み気泡を生じるリスクを金型内の真空度を高めるなど新たな手法を開発)によって、最も薄い箇所で2mmも可能にすることができるため軽量で強度剛性を確保、車輌重量を乾燥で162kgと250cc並みの軽さに収めている。

かくしてこの軽さを武器に、ヤマハお得意の適正なアライメント設定による安心感が支配するハンドリングで、YZF-R6の三世代目は大ヒット。
当初は正立フォークだったが2005年モデルからは倒立フォークとなる進化を遂げた。
そしてこの後も2006年からマイナーチェンジを繰り返し、カウルなど外観も変わりながら2024年まで継続、世界中でコーナリングに魅了されたスポーツライダーたちの善きパートナーとして活躍した。



