'80年代レプリカを彷彿とさせる最新テクノロジーとの熱い取り組み
スズキのGSX-R600は、ミドルクラスの需要が多いヨーロッパをメインマーケットとした輸出モデル。
現行機種にもMotoGPカラーをはじめ日本製ミドルクラスレプリカで最も先鋭化されたマシンをアピールする位置づけにある。
そのGSX-R600の初代は、GSX-R750が油冷から水冷化された1992年に、600cc版として排気量を縮小したモデルとして2年間だけしか生産されなかった超マイナーモデル。
その後、主要マーケットのヨーロッパでミドルクラスへの期待が高まる中、1997年モデルとして2代目が投入され、長い歴史のスタートとなった。
この1997年にはスーパースポーツ600ccクラスのワールドシリーズが始まり、1999年には世界選手権へ格上げ。
この流れをチャンスとGPマシンからのフィードバックを反映するお家芸のレプリカ開発で、106PSを発揮する軽量コンパクトなマシンをリリース。
1,390mmのショートホイールベースと174kgの車体は、パワーウェイトレシオ1.6kg/PSと目覚ましいパフォーマンスで注目を浴びた。
高度化を辿るモデル進化にカタログも専門誌並みに詳細を伝える!
2001年からのモデルは、レースで培った最新技術を取り入れエンジンからすべて新設計となった。
最新のフューエルインジェクションシステムの採用など燃焼効率を向上、2000年モデル比で最高出力が4.5%向上。エンジンサイズも長さが21mm、幅が8mm、高さが20mmコンパクトになり、重量を4kg軽減している。
車体はトータルで7kg軽量化できた上に、サイズも高さが30mm、幅が5mm小さくなり、一段と軽く小さくなっている。
その結果、乾燥重量は2000年モデルの174kgから163kgにまで軽量化。エンジン性能の向上と相まってハンドリングと加速性能のポテンシャルをさらに高めている。
このように各部にわたり最新テクノロジーを反映した全面変更という高度な設計をアピールするため、2003年モデルのカタログには材質がチタンなど高コスト化されていること、エンジンをコンパクト化するため各気筒間のサイズをさらに詰めていたり、バルブの角度やオイルクーラーも水冷化してオイルフィルターとは別体にしている等々、バイク専門誌の記事のように詳細な情報を掲載。
まさに日本のレーサーレプリカ全盛の頃と同じような先鋭化の途上にあった。
カラーリングもレーシーというより大胆なアピールも加わり、これまでと世代が違う印象を強めている。
2006年モデルはエンジンを新設計、前モデルに比べて高さが20mm低く、長さが54mm短い、幅も16mm狭い、コンパクト化をさらに進めている。
また、マフラーチャンバーをオイルパン下に配置するSAESを採用したことでマフラーボディーを極端に小さく短くすることができた。
エンジンのコンパクト化に伴ってシャーシもコンパクト化と低重心化を進め、ホイールベースを伸ばさずスイングアームを35mm延長してアンチスクワット効果に幅を持たせることができた結果、ライダーの体重移動やライディングポジションの自由度を増している。
トレンドカラーを纏い継続機種として新しさを失わず!
2008年モデルでは、エンジンのシリンダー間ベンチレーションホールをφ39からφ41へ拡大、圧縮比を12.5から12.8に変更、各インジェクターホール数を2個に増やし、イリジウムスパークプラグの採用などで、最高出力92.0kwをキープしながら、低・中速トルクを向上させている。
また、2007年のGSX-R1000で採用実績のあるの電子制御式ステアリングダンパーの採用、さらにS-DMS(スズキ・ドライブモードセレクター)、可変フットレストの採用により、それぞれのライダーの乗り方や体格に合わせた調整が可能となった。
またヘッドライトを縦2灯から横3灯に変更、スタイリングデザインも変えている。
2011年以降のエンジンは、あらゆるムービングパーツを新設計、2kg軽量化やメカロス低減、低中速性能向上を得て、最高出力92.5kW、最大トルクは69.6N・mとなっている。
S-DMSとバックトルクリミッターの採用やよりクロスしたレシオのミッションとして、ホイールベースを15mm短縮するなどサーキット・ポテンシャルも高めている。
外観樹脂部品、マフラー、フレーム、フロントフォーク、リヤサスペンション、スイングアーム、フロントブレーキキャリパーなど、あらゆる部品で軽量化を極め、2010年モデルと較べて装備重量9kgの軽量化を果たした。
初代モデルから30年以上も経つが、GSX-R600は依然として現行モデル。
レース仕様などは用意されなくなったが、トレンドカラーを纏いスーパースポーツとしての高次元な完成度をファンに提供し続けている。