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ステップの下側から突き出した“棒”は何のため?【ライドナレッジ007】

Photos:
長谷川 徹,柴田 直行,伊藤康司

車体を傾けたら真っ先に接地する“バンクセンサー”

カーブを曲がるために深くバンクさせると、車体のどこかが地面に接地して、ゴリッとかガーッという音と共にステップから衝撃がきてビックリしたことがあるライダーもいるはず。特にクルーザーやネイキッドのオーナーは、愛車で走る初めてのワインディングやサーキットでそんな経験をしているかもしれない。

そんな時、驚いて車体を起こす余裕があれば大丈夫だが、問題なのは、マフラーやフレーム、エンジン等の車体にシッカリ固定された部品が接地することで、タイヤが路面から浮いてしまった場合だ。完全に浮き上がらないまでもグリップ力を損なうためスリップする可能性は高くなるし、もし完全に浮き上がったら転倒してしまうこともある。

そこで現在の市販バイクには、接地すると折りたたまれる“可倒式ステップ”が装備されていて、さらにステップの下側には地面に向かって伸びた棒状の“バンクセンサー”が備わっている。そして車体を深く傾けた際に、このバンクセンサーが真っ先に接地して、「ここがバンク角の限界」と知らせてくれるのだ。

バンクセンサーの仕事って?

さらにステップが可倒式になっていることにもきちんと理由がある。バンクセンサーが地面に接地した時に折りたたむことで荷重を逃がし、タイヤが浮くのを防いでくれるのである。もちろん、バンクセンサーが接地してステップが折りたたまれるのもお構いなしにバンクを深めてたり、ステップを踏み込めば、いずれはタイヤが浮いてしまうかもしれないが、その前に車体を起こすなど余裕を持って対処する時間があるはずだ。

このステップのバンクセンサー、ほとんどの国産車が装備しているが、なかには妙に長くて少々カッコ悪く思ったり、停車時に足を出した際にパンツの裾が引っかかったりして邪魔に感じる場合もなくはない。

バンクセンサーの傷が気になったり、削れすぎて先端が鋭利になっている場合はこの部分のみ交換することも可能だから、ステップのベースに到達する前に交換したいところだ。

可倒式ステップ以外が地面に接地すると、タイヤが浮くことも……

そして、アフターパーツのステップキットに交換して、「見た目もスポーティでカッコ良いし、簡単に接地しないからバンク角が増えた!」と思うのは早計。ステップのバンクセンサーが無くなった分、バンク角は増えるかもしれないが、次にどこかが接地したらタイヤが浮いて転んでしまうかもしれない。それを把握するまでは探りながら走るのが無難だ。

というワケで、バンクセンサーを装備していないバイク(基本的にはステップが最初に接地するバイクが多いが、中にはマフラーやサイドスタンド、エンジンなどが接地するバイクもある)などに乗る時は、“傾けすぎ”にご注意を……

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車体が路面に接地した時の衝撃を逃してくれる可倒式のノーマルステップ。バンクセンサーの形状や長さはメーカーによってそれぞれ。先端が丸くなり、衝撃を逃す形状のものもあれば、妙に長いものもある。いろいろなバイクを観察してみると面白いかも

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可倒式ステップは折りたたまれるように動き、力を逃してくれる

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同じ可倒式ステップでもバンクセンサーが装着されていないモデルもある