img_article_detail_01

Q.半クラッチの使いすぎはエンジンを傷めますか?【教えてネモケン124】

oshiete-nemoken_124_20230201_main.jpg

ツーリング仲間に半クラッチを使いすぎと言われました。確かに発進だけでなくギヤチェンジが面倒なとき良く使います。半クラッチはエンジンを傷めるのですか?

A.発進の度に使う半クラッチ……使う頻度が多いとエンジンを傷めてしまうというほどヤワな機能パーツではありません。しかし駆動力で繋がっているタイミングで滑らせたリを繰り返すと、発熱で表面が滑りやすくなり、そのまま酷使するとレバーを放しているのに半クラッチのように滑って交換が必要になることもあります。

クラッチレバーに軽く触っているだけで滑らせている危険性が……

oshiete-nemoken_124_20230201_01

レースのスタートのように、ピークパワー域でクラッチミート(半クラッチ)すれば最大発進加速が得られますが、そこまで限界域で繰り返し酷使したら、猛烈な回転差スリップで摩耗もします。
でもそんな使い方、日常では考えられませんよネ。お仲間があなたにアドバイスしてるのは、中途半端に半クラッチを使うのが良くないという意味だと思います。

カーブなどでシフトダウンの回数を減らし、高目のギヤで進入したときなど、立ち上がりでつい半クラッチを使ってしまわれているようですが、これはトラクションが不足したり安定しなかったりで良くありません。
さらにツーリング中だと、発進と違って走行状態での半クラッチは意外なほど負荷が高く、常用するとクラッチを傷めます。

oshiete-nemoken_124_20230201_02

これは複数枚あるクラッチとフリクション・プレートの接触面だけではなく、むしろフリクション・プレートの駆動方向を押さえているクラッチ・ハウジングとのショックによる損傷が心配です。
ここは駆動方向が加速なのか減速なのかでフリクション・プレートのツメが当たる方向が変わるため、頻繁に衝撃を与えると加減速でバックラッシュ(歯車同士の隙間によるガタツキ)が増える結果となり、スムーズな操作のできないエンジンにしてしまう可能性があります。

さらに頻繁に半クラッチを使うライダーは、常にクラッチレバーに指がかかっていることが多く、これが気がつかない程度の半クラッチ状態を常に誘発しているかも知れません。
スリップばかりしていると、高温でフリクションプレートが焦げたように硬くなり、強いトルクやパワーに対し、クラッチを切っていなくてもスリップしやすくなるのです。

長い半クラッチの呪縛から解放されよう!

oshiete-nemoken_124_20230201_03

エンストを怖れるあまり、キャリアが浅いとついエンジンの回転を上げつつクラッチレバーを徐々に放していく扱いになりがちです。
この半クラッチが長い状態は、せっかく低い回転域までトルクのあるエンジン特性を活かしていません。短い半クラッチだとエンストしがちと思い込んでいるとしたら、それはクラッチを繋ぐ瞬間のスロットル開度が不足しているからです。

発進はスロットルを捻るのが先ではなく、クラッチレバーを半クラッチ状態になる位置まで放し、そこでスロットルを開けながらクラッチレバーをさらに放す……という手順に慣れましょう。
クラッチが繋がるとき、低い回転域であればスロットル開度が大きくても急激に飛び出したりすることはありません。

ベテランが短い半クラッチで発進できるのは、このときのスロットル開度が適切に大きいからです。
発進直後の左折など、半クラッチをキープしにくい状況でも強みを発揮できるのと、曲がるとき頼りになる後輪のトラクションも素早く得られるので、ぜひ身につけておきましょう。

クラッチレバーの遊びをチェックしておくのを忘れずに

oshiete-nemoken_124_20230201_04

油圧操作であればクラッチレバーの遊びは一定ですが、ワイヤー操作だと遊びのアジャスター次第で知らずにちょっとだけクラッチを引いた状態になっていることもあります。
放置すると、速度が高いときなどスロットルを大きく開けたときに、ウヮ~ンとエンジンが唸ってクラッチが滑ってしまう癖がつきます。
クラッチレバーには、ギヤチェンジ以外に指を触れないことです。

またライテクで頻繁にアドバイスしているように、ギヤチェンジではスロットル操作とクラッチレバー操作を小さい動きで素早く、それも半クラッチになるかならないか程度の短いレバー・ストロークで済ませてしまうコツも早めに習得しておきましょう。
丁寧に時間をかけてクラッチを深く切ってから操作するシフトチェンジや、スムーズに繋ごうと徐々に放したりする操作は、クラッチが切れている間の回転差が大きく、繋いだり切ったりの度に半クラッチを強いられた状態になるため、意外に傷める結果となります。

oshiete-nemoken_124_20230201_05

クラッチをほとんど切らずに素早くギヤチェンジするのが、実はクラッチにもミッションにも負担が少ないのです。
同じショックのないギヤチェンジでも、ゆっくり時間をかけると機械的に傷めやすく、カツン・コツンと手短にテキパキ操作するほうが、クラッチを長持ちさせるメリットが含まれているのをお忘れなく。

Photos:
Shutterstock,藤原 らんか,iStock,Diego Cerro Jimenez