RC 8Cをオーダーした200人から幸運な30人が、
バレンシアで納車とセッティングを含むトレーニング、
そしてミカ・カリオが乗るRC16でタンデム経験!
KTMはスーパースポーツのカテゴリーでは中型のRC390が上限で、ビッグバイクは現在ラインナップしていない。
しかしネイキッドにスポーツ性の高い890 DUKE GPがあり、搭載されているパラレルツインのLC8cエンジンをベースに、フレームから足回りまでコンプリートでサーキット専用マシンを開発、RC 8Cの車名で限定生産、しかもオンライン発売で瞬時に完売してきた。
開発コンセプトは同社のスローガン、Ready to Race なのはもちろんだが、KTMも参戦しているMotoGPマシンを市販化しても一般のライダーには楽しめるシロモノではない。
そもそも各社のスーパーバイクでさえ常識的には手に余る……MotoGP開発をしてきたKTMは、ハイエンドのノウハウを駆使した一般ライダーが楽しめる、高次元なサーキット専用マシンがターゲットとなった。
そして2021年7月、2022年の最終納品を目指す初のRC 8Cを発表、オンライン発売したところ100台すべてが僅か4分32秒で完売したのだ。
今回2023年モデルとしてデリバリーが開始された第2世代も、生産を200台と倍増したにもかかわらず、昨年10月27日のオンライン限定発売でも、2分38秒の瞬時で完売となった。
KTMは200台の中から30人の購入オーナーを、MotpGPでお馴染みのバレンシアでの引き渡しを兼ねたセッティングやトレーニング、そしてMotoGPでRC16の開発ライダーを務めるミカ・カリオとジェレミー・マクウィリアムズよるRC16タンデム体験までパッケージされたSpl.トリップを企画。
幸運な30人がヨーロッパ各国とアメリカ・カナダからバレンシアへとやってきたのだ。
30人は2日間に渡り、マシンのセットアップやライディングを体験。MotoGPチームもバックアップして、エースのブラッド・ビンダーが駆けつける大サービスぶりだ。
MotoGPマシン、RC16のタンデムマシンにはご覧のようにピリオンライダー用ハンドルも装備され、もとよりライダーの位置が高い上にもっと高くに座ることになる。
常にトラクションを与え続け、グリップをライダー自身がつくり続ける走りは、気の遠くなる猛烈加速はあるものの、何とも安定した確実な走りに全員が感銘を覚えていた。
コンパクトでもライダーの体格差を許容する配慮に
扱いやすさと曲がれるポテンシャルをアップ!
メディア試乗は2人だけに許され、次から次へと展開される幅の広い対応力に唯々感銘するばかり。
エンジンはサウンドこそ270°位相クランクに似てはいるが、LC8cの75°は中速のサウンドからフラットでレスポンスの鋭さが前面に出たチューン。
専用のレーシングクランクの吹け上がりに瞬発力があり、5,000rpmの中速域からグリップの良い立ち上がり加速のみならず、10,000rpmを越えてもドロップする傾向を見せない伸び方で、11,000rpm135bhpの醍醐味を目一杯味わうことができる。
バランサーをひとつ省略しているが、振動が多いとは思わせなかった。
ただTFTダッシュボードのシフターインジケーターが狂ったように点滅してシフトアップを急かされ、早めにシフトしてしまいがちだ。
前後荷重配分が54/46%の安定感と軽快感の両立は、ライダーに余計な心配をさせない効果が功を奏して、実にコーナリングが楽しい。
燃料タンクがシート後方にフューエルキャップが見えるように、車体の中心にあるメリットで、周回すると前輪荷重が減っていく変化も感じない。
ブレーキが320mm径ではなく290mmであるのが、高速コーナーなど加減速のシーンで前輪の接地感と回頭性を維持するのに貢献していることもわかりやすかった。
同時にサスペンションのポテンシャルもセッティングしていけば、さらに安心感と機動性を高める予感が大きく、ハンドル左のセレクトボタンを駆使しながらの、MotoGPライダーの仕事場を共有する誇りを存分に味わえることだろう。
Ready to Race フィロソフィーをさらに邁進!
実はこのプロジェクト、もとはKTM社内で従事していたマルクス・クレーマー氏が、スーパーモノなど趣味性の濃い独自の道を歩み、社外へ出て興したKrämer Motorcyclesとの共同開発だ。
「顧客に満足していただけるアクセスしやすいパフォーマンスを提供するという点で、このバイクの最適な点に到達したようです」とクレーマー氏は手応えに自信があるようだ。
「この後、ブルクハウゼンの新しい工場を稼働できるので、製品範囲の拡大に取り組む予定です。 私たちのような小規模メーカーが新しいバイクを開発するための市場にはまだ多くの空きスペースがあるため、既により大きな排気量とより小さなバイクの両方で新しいモデルの開発にすでに取り組んでいます」
さて、それがどんなマシンなのか、KTMとKrämer Motorcyclesの動向には目が離せない!
SPEC
- フレーム
- ダイヤモンド
- 車両重量
- 142kg
- タイヤサイズ
- F=120/70 R17
R=180/60 R17 - 軸間距離
- 1,400mm
- シート高
- 820mm
- 燃料タンク容量
- 16L
- 価格
- 39,000ユーロ
(ドイツ税込み、スペアホイール他パーツを含まず)