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このバイクに注目
SUZUKI
GSX400S KATANA
1992model

ネイキッド全盛期に不滅のトラディショナルGSX400S KATANAを新規で投じたスズキ!【このバイクに注目】

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スズキ

1981年デビューのGSX1100S KATANAは不朽の名車!

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スズキといえばKATANA……1980年にIFMA(ドイツ・ケルンショー)にスズキがハンス・ムート率いるターゲット・デザインに依頼し、スペック勝負ではなくオリジナリティが強くどこにもない個性をアピール、KATANAは当のスズキも驚くほど世界中から注目を集めた。
スズキは躊躇せずこのデザインスタディのようなプロトタイプを、可能なかぎり忠実に生産車へ反映させる開発を断行、翌1981年にはGSX1100S KATANAとしてデビューしたのだ。

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以来、根強い人気で様々ビッグバイクの変革があったものの小改良を加えながら継続生産され、1994年に国内の規制撤廃タイミングであらためてリリースというほどロングラン・モデルとなっていた。

翻って400ccスポーツバイクは、1989年にカワサキからゼファーが登場して以来、カウルのないネイキッドが流行りの中心となっていたのはご存じの通り。
スズキが対抗して美しいパイプフレームとお洒落な配色のBANDIT400を投入したり、ホンダもいかにも同社らしい際立つメカニズムをシンプルにまとめ凛としたデザインのCB-1をデビューさせたりと賑やかだったが、ノスタルジックなゼファー独り勝ちのまま。

そんなゼファーの牙城を崩そうと、スズキはKATANAのネーミングの強さで勝負しようと企んだのだ。
憧れはあっても大型2輪免許がなければ乗れないKATANA。中型にもラインナップされていたらと想うファンは少なくない。

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果たしてデビューから10年を過ぎても衰えないKATANA人気は、狙い通り400ccスポーツへ新しいニーズの風を吹かせることとなった。

とはいえ外装の着せ替えだけで済むお手軽なプロジェクトではない。
エンジンは何とか4気筒を見繕えても、車体まわりはKATANAの雰囲気を醸しだせるベースは皆無。

ということでフレームは全くの新設計、エンジンも400cc4気筒でKATANAを再現するためにベースのクランクケースは利用するものの、ほぼ新設計するのと変わらない大掛かりなプロジェクトとなったのだ。

エンジンはボア×ストロークから変更、シリンダー前傾角までKATANAに倣う徹底ぶりで、前例のないほど低中速域の逞しい4気筒に!

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まずエンジンの外観をGSX1100S KATANAのイメージを受け継ぐよう、BANDITなどのGK75Aをベースに、何とシリンダーの高さを22mmアップ、これに伴いボア×ストロークを56mm×40.4mmから、52mm×47mmと6.6mmもロングストローク化、ストローク/ボア比を1100の0.917に限りなく近い0.904としてフィーリングを少しでも近づけようとする凝りようだ。

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そうなるとクランクシャフトの鍛造型から新設計となる。ストローク延長と同時にクランクウェブの形状を変更して回転慣性を11%増して、低中速域のフィーリングを粘り強く滑らかな特性にしている。
アイドリングのまま、ローギヤにシフトしてクラッチをゆっくり放すと、GSX400S KATANAはスルスルと発進できるという、400cc4気筒では異例の特性を身につけていた。

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キャブレターもダウンドラフト・タイプだったのが通常の水平からやや傾斜した程度のアングルに。
さらに極め付けはフレームへのマウント角度も同じに見えるよう、24°だったシリンダー前傾角を18°にまで起こしてマウントしている。
水冷でも空冷フィンがつけられているが、冷却風の抜けなど気にせずに済むので、やや大胆にGSX1100Sのレプリカ然とした幅と高さの比率に固執したつくりだ。

排気系も1100 KATANAと同様に、#1と#2、#3と#4を集合させてご覧のように左右へ振り分けた4into2タイプで、さすがに低音ではないがパルシブな排気音を実現している。
当時の400ccスポーツでは大きめというか、ほぼナナハン並みの1,430mmのホイールベースを設定したパイプフレームは、そのゆったりとしたスペースに冷却水のリザーバタンクを含め各種の補機類が収まるためボリューム感も自然だ。

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前輪18インチと後輪17インチは、1100Sの前19と後18のバランスを意識してもいるが、星形スポークのキャストホイールを含め、この車格とフィットするサイズ且つハンドリングを楽しめる仕様としてチョイスしたという。
そして実際、この急かされずちょっとビッグバイクぽい緩やかな車体の動きは、バイクまかせで旋回していける安心のハンドリングが楽しめる。
前輪がジワッとアンダー気味に安定性優先で旋回も穏やかなバランスで、キャリアの浅いライダーも慣れる時間を必要としない扱いやすさが魅力。
こうした手の込んだ、しかもハンドリングや扱いやすさへ貢献する要素を積み上げたGSX400S KATANAは、そこそこの人気が出て1998年モデルまで7シーズンとこの時期としては長いモデルライフだった。