ライバルすべてがハイパーマシンへ変貌する中、カワサキファンのための進化を守る!

カワサキは1983年、輸出向けモデルと同じGPzの称号を冠したGPz750を発表した。
1972年のZ1(900)以来、世界へ向けたフラッグシップは1,000cc、1,100ccと辿りGPz1100がリリースされ、日本国内向けのザッパー系(かっ飛びバイクを意味した形容)650ベースの738cc4気筒も、同じデザインのハーフカウルを纏うフォルムへモデルチェンジされたのだ。
このZ1に端を発するカワサキのビッグバイクにとって、この10年間はスタート時点こそセンセーショナルだったが、トップパフォーマンスだけでなくクオリティやハンドリングなど、圧巻の高評価が寄せられるまさに信頼の絆を強めてきた時間でもあった。
このブランドイメージから、カワサキはこのハーフカウルのGPzシリーズには、ツーリングの実用性にも配慮の行き届いた高い総合性能とする宿命を負っていた。

基本的にはZ750GPをベースとしているが、エンジンからフレームや足まわりまで、新たにハーフカウルを装備しただけでなく実はほぼ全面刷新されている。
大径2バルブのDOHC空冷4気筒は、66.0mm×54.0mmの同じ738ccだが、GPで採用されていたd.f.i.(電子制御燃料噴射)が国内での使用環境ではメリットが薄いと採用されず、SUタイプのミクニBS34に換装され、点火系は新たに電子進角方式となり11,000rpmでリミッターが働く。
最高出力は72PS/9,500rpm(輸出仕様は85PS)で最大トルクは6.3kgm/7,500rpmだが、スペック値よりレスポンスの良さと低い回転域からの力強さが評判になっていた。



フレームはより高い剛性と軽量化のため、肉薄のパイプワークからサスペンションまで再設計となり、とくにリヤサスは2本のショックユニットから、ボトムリンクのユニトラック(Z400GPのような上下にリンクを介すタイプではない)となった。
またスイングアームはアルミ角断面タイプで、後輪のアクスルホルダーがカワサキのワークスマシンと同じエキセントリック・チェーンアジャスター(円筒面で締め付けるので剛性が高い)の採用となった。
他にもバンク角を稼ぐのに、全幅を760mmから720mmへと狭めているのも見逃せない。
因みに0→400mのスタートダッシュは11.8secと刺激の少ないルックスからは想像のつかないパフォーマンスだ。

そしてそもそも歴代でトータルバランスに優れると高評価のハンドリングも、街中の速度域から旋回のニュートラル性が高く、とりわけこのモデルでは中速域の攻めるようなライディングでも、前輪が深いバンク角でも過敏な領域が顔を出さず、ややアンダーめで安定と安心感を保つ特性へ高度にまとめられていた。
それでいてクイックでこそないが、ルックスからは想像しにくい軽快感も伴う乗りやすさで、さすがカワサキとベテランを唸らせる仕上がりだった。

ただこの同じ1983年にはホンダが新水冷DOHCのV型4気筒、VF750Fをリリースするなど世界は水冷化と斬新メカに舵を切りはじめていた。
評価の高さと信頼感で、マーケットシェアを誇ってきたカワサキも、このコンサバな空冷2バルブから抜け出しにくくなっていたのが、このGPzシリーズともいえるのだ。
とはいえ、カワサキも日本4メーカーで流行りのようになっていたターボ化を、この738ccをベースに開発、1984年にリリースしていたのだ。
しかし実は水面下で、最新の水冷DOHC16バルブで2輪初のサイドカムチェーンと超コンパクトで最速、GPZ900R Ninjaが開発中で、翌1984年にリリースされることになっていた。
こうして伝統の空冷「Z」最後のGPz750は終わりを迎えると思いきや、これまでの「Z」ファンのために改良を加えたGPz750Fが1984年にも販売されていたのだ。
この痒いトコロへ手が届くあたり、カワサキファンが減らない大きな要因であるのはいうまでもない。



