ZRX1200はヨーロッパだと理解不能でZRX1200Sがメインターゲット!

2001年、カワサキはZRX1100をZRX1200へとモデルチェンジした際、新たにハーフカウル付きのZRX1200Sをリリースした。
そもそもZRXリシーズのルーツは、1980年代にアメリカでは全米選手権AMAのスーパーバイクレースがアップライトなネイキッドスポーツで争われ、カワサキZ1000Jに乗るエディ・ローソン選手が制覇したのを記念してレプリカを販売したのがきっかけ。
このローソンレプリカが、走りを意識したネイキッドのアイコン的存在となり、とくに日本では長きにわたり人気カテゴリーとなっていた。
しかしヨーロッパとなると、アップハンドルのレースなどあり得なかったのと、ツーリングといえば長距離で高速道路の制限速度も高く、大型バイクでいわゆるネイキッドというカテゴリーはメジャーな存在ではない。
それでもZRXを長年継続してきたカワサキは、ZRXを1200へとモデルチェンジする機会に、ハーフカウルを装着したツーリングスポーツを加えることにしたのだ。


ローソンレプリカも、当初はZ1000Jがベースの空冷だったが、ZRX1100となったときから、Ninja900の水冷をルーツとしてZZ-R1100へと進化したサイドカムチェーンのテッパン・エンジンを搭載。
79.0mm×59.4mmで1,164ccは、95PS/7.500rpmと10.3kgm/3,500rpm(2004年モデルから極端に低回転で最大トルク表記……それ以前は6,000rpmが発生回転だったが、基本のエンジン特性は変わっていない)と、タウンユースからツーリングまで幅広い使われ方を前提にした特性だ。


カワサキはこのZRX1200の「S」も、国内向けにZRX1200Rのバリエーションとしてリリース。
ただローソンレプリカンのビキニカウルを、ボディマウントのハーフカウルに変えたのが「風除け」程度にしかアピールできない国内事情から、雑誌広告でもキャッチコピーからターゲットを示していない表現にとどまっていたのだ。

こうした消極的な販促活動で注目もされないままだったが、カワサキにはヨーロッパのようにツーリング好きのファンを増やしたい思いはあって、2001年から2004年まで車体色とグラフィック変更程度で継続されていた。


ヨーロッパ向けには2006年まで存続していたZRX1200S。
中庸をいく使い勝手の広さと、パフォーマンスを超弩級を必要としないかわりに購入しやすい価格設定と、まさに最も多いユーザーの価値観そのままに、こうしたツーリングスポーツは販売台数で常に最多をマークしてきた。
その1台として、海外では定番スポーツとして存在感を放ってきたバイクだ。