221hpのパニガーレV4Rをネイキッド化。モトコルセのコンプリートマシンNVC V4は扱いやすさが光るバイクに仕上がっていた。高性能パーツをしっかり機能させるアジャストはさすがだ
NVC V4の乾燥重量は163kg! パワーは221hp!
走り出すとNVC V4は、その重量以上に軽く感じさせてくれる。そして乗り心地も良い。しなやかな足周りはとても上質。硬さや難しさなどは一切なく、信じられないほど乗りやすい。迫力の見た目からは想像がつかないかもしれないが、ひとつ目のコーナーまでにまるでずっと乗っていた愛車のように身体に馴染んでしまうのだ。どこにも違和感がない。
それは、まず徹底した軽量化が効いている。外装はフルカーボン。シートはシートレールを持たないカーボンモノコック仕様で、これはMotoGPマシンと同様の思想でつくられた物。ホイールもカーボン製でディスクローターはセラミックカーボン。燃料タンクもカーボン製で、バイクの重心から離れた部分を軽くしている。
そして次にサスペンションやブレーキがレーシングマシンとほぼ同じ装備であることも大きい。ライダーの操作にダイレクトに応えるレスポンスの良さは、市販車にはないフィーリングだ。この辺りがNVC V4が1,248万円する理由でもある。
こういったバイクのインプレッションはどうしても緊張するものだ。しかし、試乗前にきちんとマシンの状況などを説明してくれるから安心。「モードはレースですかね?」とモトコルセの三町さん。タイヤウォーマーでタイヤ温度やエア圧も管理。ちなみにタイヤはいつも新しく、それも安心して走り出すことができる理由
自分が上手くなったような気持ちにさせてくれる高性能パーツ
ひとつ目のコーナーからある程度荷重を強めにかけられる信頼感は格別だ。進入も立ち上がりも理想のラインをトレースすることができる。前後オーリンズ製サスペンションは、スタンダードよりもソフトで、軽くなった車体に合わせたセッティングが施される。
220万円もするフロントフォークは何が凄いのか? それは路面追従性に尽きる。作動時にフリクションがないため、路面の凹凸を感じさせないほどスムーズに動く。また仕事が猛烈に早く、例えば普通のサスペンションが何度も3cmくらいずつ伸縮しながら路面追従するのに対し、レーシングフォークは3cm縮んだところで少し上下するだけで路面を完全に捉えているような感覚なのだ。
とにかく前輪の接地感が豊富で、ピレリ製スーパーコルサSC1を最大限グリップさせてくれる。
そしてそのコントロール性をさらに上げているのが、ラジアルマスター(40万4,800円!)とカーボンセラミックディスク(63万3,600円!)、そして価格をつけることもできない今年のスーパーバイク選手権における最新のモノブロックラジアルキャリパーだ。
あまり深く考えずにブレーキを握るだけで、自動的にブレーキをコントロールしてくれているような感じになる。これもサスペンション同様、仕事が猛烈に早いからで、僕の雑な操作を繊細に変えてくれているような気にさえなってくる。
高性能パーツがすべて機能するようにセットアップ。前後サスペンションはよく動く設定で走り出した瞬間からなじみやすい
扱いやすければ、パワーはいくらでも欲しくなる⁉︎
とても軽いのは当然だが、バイクが猛烈にコンパクトに感じるのもNVC V4の特徴のひとつ。そして、まるで自分が上手くなったかのようにも感じさせてくれる。それはどんなシチュエーションでも、前後タイヤのグリップをライダーが正確に把握できているからだろう。立ちあがりでスロットルを全開にしてもパワーを逃すことなく加速に繋げ、袖ケ浦フォレストレースウェイの直線がいつもより短く感じるほどだった。
確かにこの強烈なパフォーマンスはV4Rベースでないと得られない。この速さと気持ちよさは、スロットルを開けるのがヤミツキになる中毒性を持っている。速いだけのエンジンはたくさんあるが、デスモドロミックや独特の爆発間隔を持つドゥカティのV4は特別。メーカーによるレーシングチューンが施されたV4Rはさらに別格で、ストリートファイターV4SやパニガーレV4Sよりも排気量は小さいがレスポンスに優れ、市販車とは思えないほどのフィーリングを約束してくれるのだ。
オーリンズ製のスーパーバイクフォークにSBKでドゥカティのファクトリーチームが使うブレンボ製モノブロックキャリパーを装着。ディスクはシコム製セラミックカーボン。ホイールはBST製カーボン。リヤサスもオーリンズ製だ
高性能パーツを引き出すセットアップ術に感動
圧倒的なパワーを発揮しているのに、自信を持ってスロットルを開けられる感覚は、もはや市販車の感覚ではない。すべてが手の内に収まっている感じは、まるで僕のために作られたファクトリーマシンのようだ。ペースを上げていっても感動的なほどバイクと意思の疎通を深めることができる。パワフルだけどきちんとスロットルを開けられるし、超軽量な車体はブレーキングから立ち上がりまですべてのシーンで心強い。
高性能パーツはただ装着するだけではその機能を発揮させることはできない。そのすべてを調律してこそ、相乗効果でどんどんよくなっていくのである。
モトコルセが制作したNVC V4はその極みにいる。
ボディパーツはタンクやシートも含めすべてカーボン製に。外装がkg単位で軽くなるだけでハンドリングは別物になる
クラッチはSTM製。スタンダードのパニガーレV4やストリートファイターとはまったく異なる味付け。エンジンブレーキを理想的なタイミングで軽減してくれ、コーナー進入で向きを変えるタイミングを掴みやすい
こういった細部のディテールを見てもどこにもスキがないのがモトコルセのコンプリートマシンだ
ウインカーやステップバーなど真似できるカスタムもたくさんある。少しずつ愛車を自分色に染めていくのがカスタムの楽しさだ
マットな質感が独特の存在感。パニガーレV4Rでなく、パニガーレV4Sをベースにストリートファイター化も可能だという
立ち上がりでV4Rならではのレーシーなフィーリングを楽しむ。袖ケ浦のコースが狭く感じるほど、その速さは別格だ
タイヤはピレリ製のスーパーコルサSC1。どんなシチュエーションでもインフォメーションが豊富で、高性能パーツとの相性も抜群