A.路面に吸い付くグリップで安心感は絶大です!
メーカーが生産工場で組み込んだフロントフォークやリヤサスペンションを、高価なカスタムパーツに交換しているライダーがいます。
有名ブランドだとリヤサスで10万円以上、フロントフォークで30万円以上と超高価。
エンジンのチューンとかマフラーでもないのに、そこまで費やして何が得られるのか、と思われるかも知れません。
最大の違いは、ちょっとした入力にも良く動くこと。エッ、サスはスポーティな仕様ほど硬くしてあるのでは?というのは大きな勘違いです。
たとえば、一見スムーズな舗装路面でも、表面は鏡面のように真っ平らというワケにはいかず、細かく上下があったり傾斜もしています。
これが矢継ぎ早にやってくると、グリップ性能を追求した柔らかいゴムのトレッド(路面に接する部分)でも、面圧が減って滑りやすくなったり、浮き気味になることもあります。
こうした状況に、高性能なサスはわずかな動きにも追従して、タイヤと路面の接地圧をキープするので、グリップ性能は格段に高まります。
高まる圧力、これを減圧して常に動く状態をキープ
しかし、このわずかな動きにも常に追従できる状態というのは、簡単ではないのです。
ご存じかも知れませんが、サスには筒のカタチをしたダンパーというメカニズムがあって、中にはオイルが封入してあります。
このダンパーは大きな凹凸を乗り越えたとき、スプリングが大きく上下動した後に、反復して伸び縮みを繰り返すのを抑えようと、水鉄砲の原理で小さな穴を通るオイルの抵抗でフワつきを押え込む役割を担っているのです。
ところがオイルには厄介な特性があって、短いストロークで細かに素早く往復すると、どこからか急に圧力が高まり、サスペンションが硬く動かない状況に陥るのです。こうなってはサスの役割が危うくなるので、大量生産されるサスペンションは、減衰力という動きを抑制する性能をあまり与えていません。
分解したらそのパーツの多さに驚くでしょう
では高価なサスペンションではどうなるのかというと、オイルの圧力が高まりそうになると、その圧力を逃がす実に複雑なメカニズムが内蔵されていて、硬くなる状況には陥りません。
大きくストロークする動きの中に、微小な上下動が複雑に加わっても、タイヤの面圧を大きく変化させず安定した路面との関係が維持されます。
どんな動きにも震えるように作動しながら、やんわりと不安定にならない抑え方が可能な状態の安心感……その乗りやすさといったらありません。
しかもたとえタイヤが滑りはじめても一気にスリップしないので、ライダーは常に安心で快適な走りを楽しむことができます。
ビギナーの領域の速度でも、絶大な安心感に早くバイクに馴染めるなど、はかりしれないほど多くのメリットがあります。
最近ではスーパースポーツをはじめ、こうした高度なサスペンションを標準装備するハイエンドモデルも増えてきました。
バイク選びでも、どんなレベルのサスペンションが装着されているか、大事なチェックポイントになりつつあります。
- Words:
- 根本 健