発売前から大きな話題を呼んでいたGB350。メインターゲットはもちろんインドなのだが、日本においてはU39割など若者に向けた販売施策を実施している。実際に20代の編集部員・正田が試乗してみた
決してノリノリバイクではないが、趣とその安定感が心を揺さぶる
ハイネスCB350がインドで発売されたとき、正直に言うとあまり興味が沸かなかった。
僕は、免許取得から6年目、サーキットで膝を擦るようなバイクがカッコいいと思っているし、ゆったりバイクよりもノリノリバイクの方が性に合っている。
しかし、GB350の試乗会場で実車を目の前にして、開発陣の話を聞くと、このバイクにどんどん興味が湧いてきた。まんまと開発陣の思惑や術中にハマったような気分になった。面白いのは、一緒に行った根本、小川、そして宮城 光さんが開発陣と話をしながら子供のようにはしゃいでいたところだ。
僕は初めてメーカー試乗会に参加したのだが、開発陣が10人くらい来ていることにも驚いた。しかも、グイグイ話しかけてくれる。開発裏話のような苦労話やこだわりも面白かった。
試乗会は、開発チームの話から始まる。その後、車体の撮影が始まり、媒体ごとに試乗をするといった流れだ。試乗のあとは根本や小川、宮城さんがフィーリングなどについて開発陣から質問を受けていた。メディア向け試乗会にたくさんの開発陣が集まっている理由がわかった。
RIDE HIが訪れた回には5媒体ほどが集まり、ある媒体は動画を撮影、ある媒体は試乗会の時間内ギリギリまで会場から離れた場所で撮影するなど、媒体によって撮影スタイルもまったく異なっていた。
GB350は若者に受け入れられるだろうか?
肝心のGB350について、まずはルックスから見てみよう。
GB350は55万円と若者にも手が届きやすい価格であり、各部位からなるべくシンプルな作りで価格を抑えようという努力が見られる。ネイキッドのそのフォルムの特性上、ほとんどのパーツが丸見えになるため、大変な試行錯誤がなされていたのではないかと想像できる。
そして、実車をホンダドリームなどに見に行ってもらえばわかると思うが、その存在感や車体の大きさに驚いた。写真を見て感じていたのは、コンパクトで小さくまとめられたバイクなのだろうなというもの。しかし、エンジンからなのかタンクからなのかわからないが、車体を印象付ける“何か”を感じた。
製品説明の車両外観の説明文には、「骨格としてのフレーム」「ボディとしてのフューエルタンク」「象徴としての空冷直立単気筒エンジン」の3つを外観の印象を左右する核として位置づけたとあり、開発陣の意図通り僕の目にはその印象が残ったのだ。
バイク好きの開発陣の話に引き込まれる
試乗会の会場には開発陣もいたのだが、その方々がおもしろい。当たり前かもしれないが、みんなバイクが大好きで楽しみながら開発をしているような印象を受けた。
色々な話を聞いたが、一番記憶に残ったのは、エンジン内のバランサーの話。
GB350のエンジン開発では燃焼エネルギーを心地よさや手応えとしてライダーに届ける“鼓動=味わい”と、不快な“振動=雑味”を明確に分け、その不快な振動を軽減させるバランサーを2つ配置している。この話を聞いて頭に浮かんだのは、「バイクって不安定だったりキッチリしてないところがおもしろいんじゃないの?」という疑問だ。
しかし、やはりここでも開発者の思惑があり、わざと完全に振動を消す配置にはしていないとの説明を受けた。やっぱり、そういうところにもバイクの魅力があるのだ。そしてそれを理解し、楽しんでいる技術者が作ったバイクなのだ。
排気音に関しても、マフラーの型が完成したあとに、より良いエキゾーストノートをさらに追求して水抜き穴の径を1mm単位で調整するなどしたともいう。
また、シフトペダルは踵側を踏み込んでシフトアップつま先側を踏み込んでシフトダウンできるクルーザーのようなペダルとなっている。これは、インドではサンダルで乗るようなライダーがいたり、スニーカーや通勤用の革靴が汚れないようにという工夫だそうだ。個人的には、タンデムステップに足をかけて逆シフトのレーサーごっこが楽しめるかもと妄想した……。
バランサー構成イメージ
乗り心地はどうなの……?
僕はバイク歴6年目のライダーで、読者の皆様のほうが経験豊富で多くのバイクに乗っていると思う。ここでは、同世代のバイクに乗り始めたばかりのライダーたちに感じてほしいことを伝えたい。
エンジンをかけて感じるのは、開発者のこだわりのエキゾーストノート。ちょっと高価なイヤホンやヘッドホンで音楽を聴いたときに感じるような重低音の音圧が350ccのエンジンから直接身体へと伝わってくる。きっと、タンデムで後ろに乗っていたら眠たくなってくる自分が想像できる、心地よいサウンドと鼓動感だ。
そして、走り出すとスイスイらくらくと走り続けられる。レブリミットが低めに設定されていて、僕はもうちょっと回したい! と感じたが、72歳の根本に話を聞くと、このフィーリングがいいじゃないか! と言っていた。僕にはまだ理解できない領域なのだろうが、その点についてはちょっと物足りない感じがした。
しかし、このバイクの楽しみ方は、下道で知らない道を不安なくトコトコと走っていくことなのではないかと思う。僕は、北海道から四国まで東京を中心に同じホンダのCB400SFでツーリングをしたが、GB350はそんな旅をもっと旅らしく、ゆっくりと流れる時間を楽しめるバイクであるような気がした。
いつもよりちょっと遠くへ、自分の知らないところへ、知らない道を駆け抜けてみたい。そんな夢にあふれる免許取り立てのルーキーだったり、経験の浅いライダーにオススメしたいバイクだ。
GB350で通勤していたら、自然ともっとバイクの趣味の深いところに引き込んでくれそうな魅力もある。トコトコ走っているのが本当に気持ちいいのだ。
ちなみに、39歳以下は車両購入に使える5万円分クーポンを配布しているので実質本体価格50万円で購入することができる。この年齢制限にも賛否があるようだが、キャンペーン範囲内の僕は、若者を後押ししてくれるHondaの心意気を感じた。
GB350 キャンディークロモスフィアレッド
僕が初めて買ったバイク、2014年式のCB400SFキャンディープロミネンスレッドに似た色で親近感を覚えた。ホンダの赤色は高級感があってかっこいい
SPEC
- フレーム
- セミダブルクレードル
- 車両重量
- 180kg
- タイヤサイズ
- F=100/90-19 R=130/70-18
- 全長/全幅/全高
- 2,180/800/1,105mm