1969年に量産車で世界初の4気筒、CB750FOURをリリース、ビッグバイクの頂点に君臨したホンダ。
しかし四輪のアメリカで課された最も厳しい排気ガス規制に対し、唯一クリアできる宣言をしてCVCCエンジン開発に2輪を含む全エンジニアを投入、CB750FOURは実に10年をマイナーチェンジで凌いでから、DOHCのCB750F/900Fで大攻勢をかけ、併行して主力を全く新しいV型4気筒へとスライドする劇的な戦略を展開した。
このV4主流をうけ、1968年のCB750FOURベースをDOHC化した四発を、ようやく第2世代へと刷新した1983年、登場したCBX750Fは絶対性能の追求ではなく、タウンユースでも扱いやすいキャラクターを課題としていた。
そしてペアとして明確な街乗りを意識したHORIZONもデビューしたのだ。
次の刷新タイミングでは、1991年に主にアメリカ市場向けの街乗りNighthawk750を先行してリリース。
続く1992年に今度はヨーロッパを主体とした新CB750が登場した。
コンサバで目立たない存在をカラバリでポイントアップ!
900ccや1,100ccといったオーバー750が群雄割拠を繰り広げている状況で、ナナハンに求められるのはベーシックスポーツとしての立ち位置。
ホンダは頂点の性能を追わないユーザーへ向け、敢えて5速仕様とするなどこれまでのノウハウを注ぎ込んだ、ハンドリングが軽快でライディングを実用域で楽しめる特性にまとめたのだ。
そうしたいわば地味なコンセプトのため、CB750はデザイン的にもコンサバに徹したつくりとなった。
ただ当初から言われたのが、走りを楽しめる高いスポーツ性を秘めているのに、ルックスが地味でもったいないという声。
そこでカラーリングをダーク系のみだったのにレッド系を加えるなど、地味さを払拭するカラーリングのバリエーションが続々と登場する流れができたのだ。
2004年に追加されたグラフィックには、より大型で採用された定番のトリコロールをまずレッド系から投入。
また走りに凄みもあることから、2004年モデルにはダーク系でも刺激のあるツートンが加えられた。
そしてお約束のブルー系トリコロールも当然のリリース。
さらに2006年には地味さと派手さを織り交ぜたツートンも投入、コンサバなイメージを塗り替える思い切ったカラーリングの試行が繰り返されていた。
教習車のイメージ払拭でスーパースポーツのカラーリングを纏う!
もうひとつ、ネガティブな要素といえるのが、大型免許の教習車に採用されたことで、ユーザーから無難な存在とされてしまうイメージの払拭があった。
そこで2007年に採用されたのが、フレディ・スペンサーが750F/900F系でアップライトなスーパーバイク時代に圧勝したカラーリング。
コンサバを貫くコンセプトは、遂にスーパースポーツの衣裳を纏うまで展開が変わってきたのだ。
それもこれも、乗れば軽やかで素直なハンドリングと、中速域を主体に扱いやすいレスポンスと有効なトラクションが醸し出すコーナリング・ポテンシャルだからだ。
しかし、そうした評価はキャリアを積んだライダーからが多く、見た目で選ぶライダーが多いクラスだけに、もうひとつ特別感でプッシュする必要性から、2007年にはスペシャル版が登場。
シルバーの燃料タンクは、あのフラッグシップとしてあまりに高名な6気筒CBXを模したものだ。
まさかの展開という他ないCBナナハンのこうしたスペシャルペイントの数々は、意外と知られないまま。
あらためて、優れたポテンシャルに、ホンダが込めた思いの濃さを思い知らされる。