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誤解しがちなURBANやRAINモードで最新の進化を楽しもう!【ライドナレッジ111】

Photos:
DUCATI,BMW

ライディングモードはパワーカットなどするフェイルセイフ目的ではない

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最新のビッグバイクには、ほぼすべてにライディングモードが装備されている。それは中型クラスにも波及しつつある。
メーカーやカテゴリーによって様々な表記があって、ROADやSPORTにTOURING、もしくはURBANにRAINと、走行する環境によってセレクトするイメージになっている。

しかしライダー側の解釈は、SPORTにはじまる高性能を使えるキャリアや腕の立つ人向けを頂点に、怖がらずに勢いで乗れるライダーが使える順にROADやTOURING、ビビリー層にはURBANやRAINと続いていると思いがちだ。

確かにそもそものライディングモードが開発されたきっかけは、GPレースでコーナリング中のマシンがパワーに負けてスリップしたとき、大きくスライドした後にリヤタイヤのグリップが一瞬戻り、バンクしていたのと反対側へ吹っ飛ばされる「ハイサイド」の危険からライダーを守るためだった。
急ブレーキで前輪がロックすると転倒する危険から守るABSも同様だ。

この滑ったら感知してエンジンのパワーを抑えるトラクション・コントロールと、ロックしたらブレーキを緩めるABSは、共にフェイルセイフ、ライダーのミスをリカバーする目的で開発がスタートしたが、いまはそうした保険の意味を超え、もっと高い次元で操れるよう高度な内容へと進化している。

もっとグリップできるように、もっと経験の浅いライダーでも使えるように、
燃焼テクノロジーの進化はより低い回転域を武器にしつつある

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レースの世界でもトラクション・コントロールを単に滑らない仕組みへ開発したら、最大のエネルギーでコーナリングと加速を両立させようとするライダーには邪魔な存在でしかない。
そのギリギリ滑りそうで持ちこたえる限界特性をどんなに極めても、結局はライダーがトラクション・コントロールが介入しない領域、わかりやすくいえば回転の低いトルクで走る領域を使いはじめ、開発もそちらへ拡がっていくことになったのだ。

そうしたハイエンドのテクノロジーは、いま最新のスーパースポーツだけでなくアドベンチャー系からネイキッドまで、次々にフィードバックされる流れにある。
たとえば2気筒の4気筒に比べると爆発間隔が広いメリットを、さらに際立たせるため270°位相クランクで、パラレルツインを90°Vツイン同様に駆動へパルス(脈動)が明確な鼓動とするのが既に流行りとなっている。

しかも電子制御の進化で、気筒あたりが大きなツインが苦手だった低い回転域のノッキング対策も万全で、2,500rpmあたりからグイグイ加速できるエンジン特性も得られるようになった。
それはさらにスロットルを戻してすぐ開けたときのレスポンスや、トラクション効率に優れたアライメントとの組み合わせなど、むしろそこが技術の見せドコロというまで競り合うように完成度が高まっている。

URBANもRAINも、保険的な意味合いは既に二の次で、
どう楽しめるかの特性追求は、ビギナーも醍醐味を伺い知れることに!

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ここまで説明したように、テクノロジーの進化で大きく変わってきたライディングモードの次元の違いを見過ごしては、もったいないも甚だしいことになる。
URBANの意味する街乗りで様々な急のつく変化に対応できる、鋭さより穏やかな扱いやすさとか、RAINが言葉どおり濡れた路面でいっさいスリップしないよう穏やかな特性が支配した状態など、リカバリー側の進化はとっくに達成していて、いまやライダーが操る際の官能度合いを高めるまでになっているのだ。
ハッキリいってURBANモードやRAINモードは、意外なほど面白い設定へと熟成されているのに驚かされる。
そこには「ビビリー」や「ヘタレ」ライダー用などというニュアンスが全くない、リスクは避けつつスリリングなバイクの躍動感を楽しんでもらおうという開発者の心意気を感じる。

海外製ツインには、ほぼどの機種にもそれぞれのオリジナルな感性で「スーパーなスポーツバイク」にまとめている努力の痕が明確だ。
そんな最新のライディングモード、SPORTなどへムリに切り替えて怖々走る意味など全くないといえるだろう。