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このバイクに注目
HONDA
VFR750R(RC30)
1987model

RC30(VFR750R)は国内1,000台を148万円の抽選で瞬時に完売!【このバイクに注目】

Photos:
HONDA

世界で無敵のRVFワークスマシンを市販するプロジェクトに挑戦!

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1987年の秋、ホンダはバイク雑誌に、車輌画像のないカードのみの謎めいた広告を掲載した。
日本国内に限定1,000台で148万円、その抽選も終わりこれから出荷されるという案内で、シリアルナンバーが刻まれたカードは選ばれたオーナーのもの。
プロダクトとしてのスポーツバイクで、これまでになかった取り組みで誕生したこのRC30というマシンの存在意味を謳っていた。

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’80年代は世界GPと共に市販車をベースにハイチューンのワークスマシンが群雄割拠するフォーミュラ750のレースが世界中で繰り広げられた。
その中で2気筒並みにスリムでハイパー、且つ駆動トルクも強大で広範囲なホンダV4のワークスマシンRVFが、圧倒的なチカラを見せつけていた。
このレプリカが型式名RC30と呼ぶVFR750R。
しかしレプリカといっても他とは次元が異なり、そもそもがレース用の市販レーサーに、一般公道を走れる灯火類や排気ガスや騒音規制に合致するよう手を加えたマシンなのだ。
つまりレース専用マシンでは量産を前提としない緻密な加工精度や、材質も軽量化と強度のためならコストを惜しまない、そんなつくりから価格も148万円、当時はベースのVFR750Fが84万9千円なので、如何にその差が大きいかがわかる。

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エンジンはVFR750Fベースだが、クランクシャフトが360°位相でトラクションの刻みビートが中速域からグイグイと路面を蹴るトラクション優先の設定。
排気の集合もこの特徴を活かす取り回しで、やや低周波のビートを聴かせる排気音だ。
コンロッドはレース専用のチタン合金製。ピストンもセカンダリーのないトップとオイルリングの2本仕様と市販車の常識から外れた仕様。
因みに70.0mm×48.6mmの748ccから、輸出仕様では112PS/12,500rpmだが、国内向けは自主規制値上限の77PS/9,500rpmと7.1kgm/7,,000rpmのスペック表示。
ワークスマシンRVFと同様に少しでも重心を下げようとヘッドまわりをコンパクト化、カセット式のカムギヤトレーンも肉厚を薄くして、カムシャフトはクロームモリブデン浸炭鋼……とVFR750Fとは似て非なる新設計づくめだ。
水冷オイルクーラーや上下2段の湾曲ラジエーターにバックトルクリミッター装備と、ワークスマシン専用パーツをコツコツと生産した基調なパーツ揃い。

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ツインチューブのフレームも、RVFと同じくメインチューブの断面にふたつのリブが入る「目の字」断面とした超高剛性仕様。
片支持スイングアームのプロアームはピボット部分が箱断面になったこれも強度充分の構成で、アームはワークスマシンからフィードバックした非線形で左右の剛性感に違いがない。
フロントフォークの前輪アクスルは、耐久レースでクイックチェンジ可能なクランプがスイング式になったタイプなど、限定市販レーサー然とした装備が一目瞭然。
こうした一般公道の仕様で乾燥180kgに収めている。

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走れば400ccクラスでも及ばない軽快さ、たとえようのない確かなハンドリング、そして強烈なダッシュがいつでも呼び出せるV4。
ブレーキのタッチからすべて、市販ロードスポーツとは格段に操作性が違う繊細さに溢れている。
同じエンジンでも、ほぼ手加工でクリアランスを緻密に調整して組み込んだ状態は、日常で使われるエンジンとフィーリングから違うのは、ワークスマシンに乗ったことがなければわからない。
しかしRC30は、そんな高次元な感性をモータースポーツファンへ届けたのだ。
ハンドリングも精緻な車体構成から正確無比なポテンシャルで、乗りこなせるライダーにはまたとない醍醐味を味わえる秀逸マシンだった。
そんなオーナーに愛着を湧かせる仕様づくめのRC30には、誕生から30年を過ぎてリフレッシュしてもらおうとメーカー自らが呼びかけたプログラムも実施された。
2025年の3月をもって終了したが、パーツの在庫があるかぎり供給を続けていくそうだ。