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ケニー・ロバーツのライディングスタイルがニースライダーを生み出した⁉︎【DAINESE Topics.003】

レースで膝をすることが当たり前の時代に

イタリアではソープバー(固形石鹸)という愛称で呼ばれるニースライダー。昨今のレザースーツには欠かせない消耗品だ。
サーキット走行ビギナーにとっては膝を擦ることは憧れであり、エキスパートにとっては最高のライディングをするための当たり前の行為である。

50年前にはあり得なかったような走り方だが、今では当たり前のように深いバンク角でプロ、アマチュア問わず、アスファルトで膝を擦っている。

キング・ケニーがその後のレーシングスーツの装備に大きな影響を与えた

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ケニー・ロバーツ

1978年、アメリカ人ライダーのケニー・ロバーツが世界GPに登場。
ケニーは、他のライダーの誰よりも深いバンク角でコーナーを曲がるために、コースのアスファルトと2本のタイヤ以外の部分で第3の接点が必要だと感じていた。そして、これが膝をアスファルトに擦りつけながらコーナリングをする習慣の始まりとなったのだ。

次第に他のプロやアマチュアのライダーたちも「キング・ケニー」のライディングスタイルやUSインターカラーのバイクに憧れ、それを真似するようになった。

各ライダーが工夫を凝らしてより最適なニースライダーを模索した

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ニースライダーの素材は様々に進化していったが、最初はダクトテープを何重にもして対処していた

ライダーたちのバンク角が深くなる一方、何も装着されていないレーシングスーツの膝のレザーはうまく滑らず、アスファルトとの摩耗で穴が開くなど何かしらの対応策が必要だった。
膝擦りが流行り始めた頃は、ライダーたちは中古バイザーを膝にフィットするように形を整えてテープで巻きつけるなど試行錯誤をしていた。

レーシングスーツメーカーはライダーたちのそんな姿を見て、新しいライディングスタイルに対応すべく装備の開発を急いだ。

そんななか、ダイネーゼは1981年「istrice(ヤマアラシ)」を導入した。ライダーが膝を曲げるとベースからプラスチックのシリンダーが多数飛び出すといった装置だった。これはその見た目がヤマアラシのように見えるために名付けられたものだった。
しかし、使用後の交換が難しく実用性に欠けるという点からほとんど使われず、istriceが組み込まれた当時のレーシングスーツはイタリアのダイネーゼのアーカイブに保管されている物を含めて数着しか残っていないそうだ。

実用性をさらに向上させるため、性能が追求され始めた

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数年後には、さらに開発が進み年々進化を続けた。
第2世代のニースライダーはレザー製で、以前のモデルに比べて硬く楕円形のスライダーはマジックテープで取り付けが可能となっており、素早い交換を可能にした。しかし、レザーはアスファルトとの摩擦力が高くグリップしてしまうため、うまくスライドしなかった。

第3世代のニースライダーは楕円形のフォルムをそのままに、プラスチック製に戻された。
この世代のニースライダーは1986年に誕生し、当時の最先端ではあったが、まだ最終的なスライダーとはならなかった。

そして、1990年代初めに現在のモデルが登場する。
見た目は先代のものと似ているが、角を取って丸くするなど形状と縁を改善した。
1993年からダイネーゼのライダーであった同年ロードレース世界選手権500ccクラスのチャンピオン、ケビン・シュワンツのレーシングスーツにもこの現代的なニースライダーが装着されていた。

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ケビン・シュワンツのニースライダー

より良いレーシングスーツのために開発は続けられる

現在のモデルができた後も20世紀の終わり頃から21世紀の初頭にかけてニースライダーの開発を続けていた。
2つのブロックに分かれた複合スライダーやクイックに連結と取り外しができるタイプなど、カール・フォガティやトロイ・ベイリス、加藤大治郎らが実際にレースの現場で使用することもあった。

しかし、この新型のニースライダーはアスファルトに引っかかりやすく、思い通りの役割を果たすことができなかった。そうして以前の形に戻ることになった。

進化だけでなく、多様化も進んだ

思うようにニースライダーを進化させることができなかったダイネーゼだが、レインスライダーといった多様化も成し遂げていた。
レインスライダーは雨天時の走行でバンク角がそれほど深くなくとも路面に接触できるように厚めに作られた。また、それに続いて高耐久素材を使用したスライダーも登場。

スライダーは膝を擦るだけでなくライダーを守るものとしても活用された

1978年のケニー・ロバーツの登場から根本的に変化したレーシングスーツのデザイン。膝をアスファルトの上でスライドさせるための特殊なパーツが誕生し、その“アスファルトの上をスライドさせる”といったアイデアは肩や肘のメタルプレートなどにも応用されてきた。

これらは、ニースライダーと同様にアスファルト上をスライドすることで地面に引っかかったり、手足が反動で危険な回転をすることを防ぐ役目を担っている。

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エルボースライダーの登場は2010年以降だが、1990年代にはすでに肘を擦りそうなほど前腕を路面に近づけて走行していた。

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PISTA KNEE SLIDER

7,700円(税込)

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PISTA RAIN KNEE SLIDER

8,250円(税込)

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PISTA KNEE SLIDER HIGH DURABILITY

8,800円(税込)

DAINESE
1972年にイタリアで設立された、モーターサイクルウエアブランド。数多くの有名ライダーにレーシングスーツを供給する。世界で初めて、バイク用のプロテクターを開発したことでも有名。デザイン性と安全性は、"From Head To Toe(頭からつま先まで)"のコンセプトでプロデュースし続けている。
またアクティブにスポーツを楽しむユーザーに向け、スキーコレクション、MTBマウンテンバイクコレクション、乗馬コレクションも展開する。

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ダイネーゼ スマートジャケットを作動させてみた|DAINESE SMART JACKET|RIDE HI

協力/ ユーロギア ダイネーゼ&AGVジャパン