【BMW S1000RR M パッケージ 試乗記】 関連記事
- Vol.1 「速さと楽しさ、それぞれを進化させる」 本記事
- Vol.2 「上手くなったかも! そう思わせてくれる最高のサポート体制」
4気筒スーパースポーツはどこまで進化する⁉︎ 2021年は、ついにM1000RRも登場
2009年の発表以来、BMW S1000RRは、“4気筒スーパースポーツ=国産”というイメージを払拭。そして2019年、そのS1000RRが初めてのフルモデルチェンジを実施。このクラスを楽しみたいユーザーが何を求めているか――。スペックだけでなく、価格やバリエーションも含めて、そこを徹底追求している
速いのは当たり前、しかし速さだけに特化していないのがBMW S1000RRの特徴だ。ニューモデルでサーキット、公道、さらにはウエット路面など様々なシチュエーションを走って感じたのは、速さやラップタイム、レースの成績に特化するのでなく、一般ライダーのフレンドリーさも考慮した進化を遂げていたことだ。いや、むしろ磨かれたのはそのフレンドリーさといっても良い。
このアプローチがとてもBMWらしい。
モータースポーツカラーはMパッケージのみ。Mパッケージは、カーボンホイール、軽量バッテリー、スポーツシート、車高調整機構、可変ピボットなどを装備。スタンダードはレーシングレッド、ホッケンハイムシルバーメタリック、ブラックストームメタリックの3色を用意
こちらは2009年モデル。当時は国産オンリーだったこのカテゴリーにBMWが殴り込みをかけてきたような印象だった。その後マイナーチェンジを繰り返しながら全世界で8万台を販売した
2009年に国産スーパースポーツに与えたインパクトはとても大きかったが、今度のS1000RRも凄い。
スーパースポーツを楽しむライダーの年齢は上がり続けている。これは世界共通の現象だ。だからこそその楽しみ方も変わりつつある。S1000RRを購入してタイムや順位を競い合うライダーは少ないし、207psを使い切るのはプロでも難しい。
もちろん公道での無理は厳禁だ。だからこそ純粋にスーパースポーツが好きなライダー、まだまだコーナリングを楽しみたい大人に向けS1000RRは進化した。
そして、このS1000RRをベースに、SBKで勝つためのマシンM1000RRが2021年に登場。こちらも国内に導入され次第、検証したいと思う。
2021年にはM1000RRも登場する。ボディのカーボンパーツなどが目立つが、SBKで勝つこと意識し、エンジンを大幅にチューンしている。500万円
新設計エンジンはシフトカムを採用し、207psを発揮
エンジンはミッション以外を新設計。特徴は先にフラットツインエンジンにも採用されたシフトカムだ。これは低速域でトルクを重視したスモールカムシャフトと高回転でのパワーを重視したハイカシャフトを9,000rpmを境に切り替える機構(スロットルの開け方によっては9,000rpmよりも手前で切り替わる)で、常に理想的なパワーデリバリーを約束してくれるモノ。
他にも前モデルからクランクシャフトを12mm短縮し、1.8kg軽量化。さまざまな部分を見直しエンジンだけで約4kgも軽量化している。車体構成の自由度を向上させるため、エンジンの前後長を短くしているのも特徴だ。
エンジンは207psを発揮。レブリミットは前モデルから400rpm上げられた14600rpmに。
クランクを1.8㎏軽量化できたのは、シフトカムにより低速を扱いやすくできるため。クランクからスターターギアをなくし、前モデルよりも12mmも幅を短縮。バルブはIN/EXともにチタン製で、IN側は中空として放熱性を向上。ロッカーアームは前モデルから3g軽量化、コンロッドは4mm短く、重量は4%軽減。ピストンスカートの裏側にオイルを噴射する冷却オイルラインも採用する
車体は、軽量化を進めつつ、ディメンションも大きく変更
フレームは、これまではヘッドパイプからピボットに直線的に伸びたアルミツインスパーだったが、ヘッドからピボットにかけて大きく下側に湾曲した形状に進化。これが膝周りのポジションの自由度を大きく向上させた。
剛性バランスは、しなやかな方向に。フレーム単体では約1.3kg軽量化。スイングアームは約300g軽量になり、2.5mm延長された。ピボットの位置はスイングアームを外さずに可変できる。
ディメンションも変化。キャスターは23.5度から23.1度に、トレールは96.5mmから93.9mmに変更され、ホイールベースは3mm長くなった。車重は前モデルからスタンダードが8kg、カーボンホイールを履くMパケッケージは11.5kgも軽くなっている。
新型はフレックスフレームと呼ばれ、しなやかさを追求。形状も低重心化に貢献し、前モデルから1.31㎏の軽量化を実現している。膝周りのポジションの自由度も増した
電子制御は理解を深めることで、様々な設定が可能
電子制御も大きく進化。ライディングモードはレイン、ロード、ダイナミック、レースの4種類で、さらにレースの中にレースプロ1、2、3を用意。例えばレースプロ3をウエット路面用にセットしておくなどなど、好みに応じて設定することが可能だ。
最近のBMWは全車共通で、視認性の高いこのメーターを採用する。このモデルからレースプロモードが採用され、より細かく好みを追求できるようになった。コースはもちろん、路面やタイヤのコンディションなどに合わせて設定しておくと、すぐに呼び出すことが可能だ。
S1000RRは、ライバルよりも1秒速いこと、前モデルから10kgの軽量化、そして楽に走れること、この3つをテーマに掲げて開発され、その目標は試乗してすぐに感じることができた。
Vol.2ではそのインプレッションをお届けしよう!
※価格は2020年12月現在
The new BMW S 1000 RR
SPEC
- 最大トルク
- 113Nm/11,000rpm
- 変速機
- 6速
- フレーム
- アルミツインスパー
- 乾燥重量
- 201kg
- ブレーキ
- F=φ320mmダブル R=φ220mm
- タイヤサイズ
- F=120/70ZR17 R=200/55ZR17
- シート高
- 824mm
- 燃料タンク容量
- 16.5L
- 車両重量
- 196.5kg(Mパッケージ)、200kg(STD)
- 価格
- 272万円~(Mパッケージ)、231万3,000円(STD)