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単気筒、ツイン、3気筒、4気筒って何が違う?【ライドナレッジ155】

スポーツバイクはエンジン・キャラクターを楽しむ乗り物

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スポーツバイクのエンジンは高度なパーツの集合体で、V4であったりパラ4や、Vツインにパラツインなど様々な呼び方のエンジン形式がある。
そもそも気筒数が違ったり、シリンダーの並び方が異なっていたり、専門知識がないと自分にはどれが最良なのかもわかりにくい。

そこでまず基本となる気筒数の違いから説明していこう。
シングルとも呼ぶ単気筒、ツインもしくは2気筒、トリプルの3気筒、そしてパラレル4(フォー)や略してパラ4、もしくはインライン(直列)の4気筒など……

クランクシャフトとシリンダーの配列で、同じ気筒数でもV型2気筒やV型4気筒とバリエーションも多い。
この気筒数、エンジンの大きさを表す排気量の区分の範疇、つまり同じ排気量のクラスに、単気筒にはじまり、2気筒、3気筒、4気筒と各種存在するのだ。

同じ大きさの排気量に単気筒、2気筒、3気筒、4気筒がある!

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運転免許制の区分にもなっている、エンジンの大きさを表す排気量とは、ピストンが1回の吸気行程で吸い込める容積量のこと。
吸気行程の容積は、ピストンの直径(ボア)で算出できる面積に、ピストンが往復する距離(ストローク)を掛け合わせれば得られる。

茶筒やポテトチップの円柱容器をイメージすればわかりやすいかも知れないが、円柱の直径面積×往復量の容積が250ccだとすると、これが2気筒あれば500ccのエンジンということになる。
これを逆に排気量区分から説明すると、たとえば500ccだとそのままの容量の単気筒、各気筒が250ccの2気筒、167ccの3気筒、そして125ccの4気筒ということになる。

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ではなぜ同じ500ccなのに、ふたつに分けた2気筒、3つに分けた3気筒、同じく4つの4気筒と違った形式としているのかといえば、エンジンは高回転になるほど出力が稼げるという原理からきている。
たとえば5,000rpmで50HPが得られるエンジンは、倍の10,000rpm回せば機械損失を無視すると100HPを稼げる計算だ。

しかしピストンが大きいと、この往復の抵抗が大きくなり、他にもバルブ作動など大きさによって慣性力が高回転化を妨げることになる。
そこでピストンをはじめ構成するパーツを小さくすることで、慣性マスを減らし高回転で往復しやすい状態をつくることができる。

ただやみくもに高回転化していくと、確かに最高速度はでるのだが、登り勾配やコーナー立ち上がりトラクションなど、トルクの強さを低い回転域で得にくくなる二律背反がついてまわる。
そこで2気筒や3気筒など、気筒の増やし方を抑えて中速域の力強さを優先して、狙ったエンジン特性とするための気筒数を設定することになる。

さらにスポーツバイクはエンジンの大きさやカタチも、ハンドリングに大きく影響するため、気筒数だけでなくシリンダー配列やフレームとの融合など、多岐にわたって検討を重ねていく。
こうした何を優先するのかによって、単気筒~4気筒など気筒数の違うエンジンが開発されているのだ。

鼓動、トラクション、楽しめる回転域も異なる!?

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たとえば同じ650ccで単気筒から2気筒、3気筒、そして4気筒まで、代表的な機種を並べてみた。
ビッグシングルのスポーツは、極端にコンパクトな車体と軽量との組み合わせで、瞬発力では3気筒や4気筒を明確に上回る力強さで、豪快なコーナリングが楽しめる。
もちろん高速域の加速やトップスピードでは2気筒以上にはかなわない。

2気筒はVツインの単気筒並みにスリムな面と、270°クランク位相のようにパルシブな路面の蹴り方で、グリップの良いトラクションの醍醐味が大きい。
※なぜ新しい2気筒は270°が主流なのか?【ライドナレッジ152】に詳しいので参考にされたい。
ただ軽快なだけに、4気筒のような安定感は期待できないという面もある。

3気筒はまさに2気筒と4気筒のメリットを併せ持つキャラクターが特徴だ。
適度な軽快感や3気筒らしいトラクションの刻み方と、長時間向きのバランスを重視した安定感もメリットになる。

そして王道の4気筒。実績の長いメーカーでは、4気筒でも驚くほどコンパクト。
運動性が犠牲になっているケースはほとんどない。
そして10,000rpmなどの高回転域まで引っ張ったときの2次曲線的な加速フィーリングは、さすが4気筒ならではのアグレッシブさが堪能できる。

もちろん各メーカーとも、この基本特性をベースに独自のテクノロジー開発で、ライバルに差をつけるエンジン・キャラクターへと魅力を増やしているはずだ。
その奥深いところまで、スペックだけでなく技術的な特徴など、カタログや資料、それにメディアの試乗記事などから読み取りながら研究されるのがお奨め。

趣味性の強いスポーツバイクだからこそ、中庸をいく無難なキャラクターは近年益々存在しない傾向にある。
ぜひ自分好みの楽しめるエンジンを捜してみよう!