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公道は上半身で寝かさない!?【ライドナレッジ124】

Photos:
藤原 らんか,Shutterstock(David San Segundo)

車体は寝かせば何となく曲がりはじめる……
でも小さく素早いアクションができれば
正確でマージンのある旋回が可能

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バイクは寝かせば曲がる……なのだが、どうやって車体を傾けるのか。
何の予備知識もなく人がオートバイを傾けようとすれば、まずハンドルを持つ手でアクションするのが一般的。
次にやりがちなのが、シートに跨がった腰でひねるアクション。これもまァまァ多い部類だ。

そして意識として少なくないのが内側のステップに体重を載せる操作。但しこれはシートから立ち上がったオフロードのような姿勢であれば有効だが、シートに着座して体重が載った状態だと、ステップだけのアクションでは何も起こらない。傾けられているのは、イン側へ身体全体を預けるようにしているからで、ステップが入力ポイントにはならないのをお忘れなく。

何れにせよ何となく曲がりはじめるので、取り敢えずは不都合を感じない。
しかしペースによっては、もしくはブラインドでカーブの先が見えなかったりする状況だと、ここぞという地点でタイムラグなく正確に曲がろうとするには向いていないアクションということになる。

身体でひねると車体の反応はズレる、
チカラづくではなく僅かな重心移動で!

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ではどうすれば正確にタイムラグなく曲がりはじめるのか。
それはシートに座った腰の部分で、脊椎で上半身を支え骨盤で体重をうけている体幹ごと、曲がろうとする側の大腿骨が入っている骨盤ホールへ移動するイメージで「重心」移動できれば、小さなアクションで素早く方向転換がはじまるので完璧。

なぜこんな動作が適切なのかというと、バイクはエンジンが一番重く、すべての動きに対し中心となる重心位置としての役割を担うことになる。
ましてやクランクシャフトが回転している運転中は、なおのことその支配度は高い。

ところがそのエンジンのある重心位置は、ライダーの踝(くるぶし)というか足首と近いかなりの低さだ。
その高さで傾く動きというと、地面からちょっとだけ上の低い位置で左右へ扇形のアクションをすることになる。

両肩のような地面から離れた高さで扇形のアクションをしようとすれば、車体がすぐ傾くレスポンスは起きない。
内側へ体重も移動するので、時間差で曲がりはじめるが、いつになるか成りゆきまかせになってしまう。

上半身を移動するのは高速サーキットだけ、
公道は小さなアクションで正確かつ美しく!

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というワケで、公道ではリーンウイズにしか見えない、上半身を左右へ移動しない、骨盤の中で僅かな体幹移動でクイックにレスポンスさせ、サクッと曲がりはじめるのがベストな操作。

その骨盤を含む腰まわりも、げんこつひとつ程度にイン側へズレる程度の小さく目立たない動きに抑える。
小さく素早く……は、できるほどにクイックな車体レスポンスと向き変えといわれる明確な進路変更が可能だ。

MotoGPのように、高速コーナーがあって1~2秒もの一般公道ではあり得ない長時間を旋回する状況では、レースシーンで見るような上半身を低く内側へ落として、それこそ肘をする極端なライディングフォームとなるが、これは前輪も旋回の内向性を高めようとするからで、公道では引きだす環境にないので絶対に真似がないように。

しかもそんなGPライダーでも、直立からリーンをはじめる最初のアクションでは、顔の位置は車体センターに残し、身体の下のほうで傾けるきっかけを与え、リーンがはじまった直後から上半身を覆い被せるようなアクションでイン側の下のほうへ落とす連続動作でアクションする。

上半身から先に左右へ動くのは、結局は曲がるレスポンスもまちまちで、進路変更の強さも成りゆきという、曖昧な操作になってしまう。
公道は小さな素早いアクションで、美しく正確に乗ろう!