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前輪が切れ込む不安はどうすれば?【ライドナレッジ096】

Photos:
Shutterstock,藤原 らんか

思ったより内側へ前輪が切れ込んでいく

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’80年代のレーサーレプリカ全盛の頃、この前輪が切れ込む切れ込まないは、ハンドリングの善し悪しを決める規準のように言われたのを懐かしく思い出すライダーもいるかも知れない。
というほど、前輪を16インチに小径化して軽快を通り越して鋭いハンドリングを狙ったバイクが乱舞していたからだ。
実際バイクによっては低速のヘアピンなど、前輪が回転するジャイロ効果を失ってバンク角が深いとスリップダウンする例も少なくなかった。
あれから40年近くも経って、そこまでバランスを欠いたバイクはまずないはずだが、小さなターンで前輪を重く感じたり内側へ切れ込む感じがして、思わず左手でハンドルを押えたという経験がたまにあったりするのはなぜなのだろう。
これはバイクの不具合ではなく、低速で前輪が安定しにくくなっていく状況に、ライダーのある種の勘違いの感覚と操作をしてしまうところに原因がある場合が多い。

曲がろうとするときバンク角が深すぎる

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バイクは通常の速度域では、後輪の旋回する軌跡の外側を前輪が追随して同心円を描くのが基本原理。
この後輪との関係が従順であるほど、ライダーは違和感なく乗れる。そしてこの前輪の追従性をセルフステアといって基本原理に逆らわないバランスとなるよう、フロントフォークの傾斜角やブラケットのオフセット量を設定してあるのだ。
ただ前輪がフラつくまで速度が下がると、このセルフステアの原理は働かなくなる。
前輪はハンドルを左右へ舵取りする操作でフラつかないようバランスをとる操作で支えるのはご存じのとおり。
これが切り替わる、15~20km/hあたりがついライダーが、いつもの安定した感覚のまま勘違いしてバイクを寝かせ過ぎると前輪が倒れ込むように内側へ切れていこうとする。
この予想外の反応に、ライダーは驚いてハンドルを押さえ「信用ならない不安」を抱くことになる。
速度が極端に低くなったら、どんな反応になるのか、とくにツーリングに出かける最初の数分間でこの不安を抱かないよう、路地の右左折で車体を勢いで寝かさず、浅い角度でアウト側ニーグリップを軽く押す程度で前輪が舵角つけるよう促す乗り方で、まずはバイクに身体を馴染ませるのがお奨め。
この低速域でバンク角が深い操作は、バイクの安定が信頼できるレベルが高い最新のバイクほど、意外にやってしまうある種の誤操作なので、前輪が切れ込む不安を感じたら、ぜひチェックと身体を馴染ませる操作をしておこう。

空気圧が不足していると似たような現象が

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また前輪の空気圧が極端に不足していると、この速度が低い状況で小さなターンを試みたとき、前輪の追従が鈍くなり、曲がりはじめた途端に今度は傾斜に反応しすぎるオーバーステア気味な動きを感じる。
低速の曲がりはじめにこのような反応を感じたら、躊躇せず路肩にバイクを止めフロントタイヤを指で押してみるのが先決。指で押す程度でたわみを感じたら、空気圧が0.5kgを割り込んだ極端に低圧なのでガソリンスタンドなどで空気圧を2.0kgあたりまで充填して、タイヤに耳をあてて「スー」というパンクで空気漏れの音がしていないかもチェックしておくほうが安心だ。
またフロントタイヤも、まだ溝があるからとスリップサインが路面と接触する手前まで使い込んでいると、同じように切れ込みを感じる場合が少なくない。できるかぎり早くリヤタイヤと一緒にタイヤ交換しておこう。
またハンドルを掴む左手が、イラストのように手首が曲がっていないかもチェックしたい。この手首の角度は、セルフステアを妨げる最大の要因だ。忘れがちになるので、常にチェックを怠らないように。