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高価なサスほど忙しく動く!?【ライドナレッジ095】

Photos:
CARROZZERIA JAPAN Co., Ltd.,Shutterstock,藤原 らんか

ハイエンドモデルほどダンパーが抑えず良く動く

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よくシートレールなどを掴んでリヤサスを上下動させ、伸びる動きがジワッと抑えられるサスペンションをダンパーが効いた高級サスと勘違いしがち。
実は高度な機構を内蔵したハイエンドモデルほど、減衰するダンパーは手で動かした速度では頼りないほどスンナリ動いてしまう。
それはダンパーが封入されているオイルによって減衰力を発生しているからだ。
サスペンションは大きな凸凹を通過したときに衝撃を吸収する基本の機能がある。
しかしスポーツモデルにとって同じくらい重要なのが路面追従性の機能。
路面からは大きな上下動だけでなく、小さな段差や凸凹が無数にやってくる。これに対応できなくては、容易くスリップして悪くすると転倒しかねない。

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つまりサスペンションの上下動する往復運動には、この小さな上下動も含まれるわけだ。大きく伸びていく動きに、細かな縮んだり伸びたりがつきまとうことになる。
路面追従性とはこうした複雑な動きに対応できる性能を意味する。
そうなると水鉄砲のようなシンプルな構造でオイル抵抗を発生させている安価な量産スポーツバイクは、激しく動くとオイルの特性として油圧が高まりダンパーの動きを抑えてしまう。
煽られたような不安定な動きを抑える減衰力は必要だが、通常の動きで必要以上に硬くなると当然だが路面追従性が落ちてタイヤのグリップ性能にも悪影響を及ぼす。
そんな事情から量産スポーツバイクのダンパーは、減衰力が必要上に強まらないよう弱めに設定されている。
これでは肝心の複雑な動きをする路面状況ではグリップに限度があるというものだ。

忙しく動いても圧力を逃がす高度なメカニズム

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対して高価なリプレイスサスは、ダンパー構造にそうした一気に高圧となる状態を感知して、高圧を利用して隙間が押し拡げられ圧力を逃がす仕組みや、窒素ガスを封入してそもそもの圧力を予め高め、キャビテーションなど急激な攪拌で気泡が生じて減衰バルブで効力がアップダウンするのを未然に防ぐ機能などが組み込まれている。
このため路面追従でしなやかに良く動く状態をキープしながら、大きな動きで減衰が必要なときにはスッと押さえ込む機能を発揮する、高度で複雑な対応ができる性能を持っているのだ。
また伸び側の高速や低速など、動きの質による設定を変えられたり、圧縮側ではデリケートな小さなストロークでも抵抗のない状態で適宜抑制する設定の調整も可能。スプリングのプリロードも量産スポーツモデルの5段階切換えではなく、無段階にデリケートな調整が可能になっている。
このしなやかで必要以上に抑え込まない特性は、装着すると発進した途端にその違いを誰でも実感できる。リヤタイヤの動きではなく荷重が安定して伝わっているフィードバックを感じ、タイヤが太くなったような安定感を伝えてくるからだ。
愛車のリフレッシュや、コーナリングを安全に楽しみたいなどの気持ちが出てきたら、こうしたリプレイスサスへの交換をお奨めしたい。