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上半身で寝かそうとする曖昧さが自信を遠ざける【ライドナレッジ084】

Photos:
shutterstock(David San Segundo),藤原 らんか

リーンできるので不都合は感じない、でもどれだけ曲がれるかは様子見になってるとしたら

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あなたはどこに入力してリーンをしているだろうか? 上半身を横へ動かす、ハンドルを持つ両腕で倒す、シートにあずけた腰で捻る、内側のステップへ加重する……多くのライダーがこの4つのどれかを答えとしてイメージする。
しかし4つ目のステップは、シートに体重をあずけて着座していたら、内側の下半身を踏ん張るだけで重心移動は全く起きないので車体は傾かない。
残る3つは結果としてライダーの重心が内側へ移動するなどして車体は傾き、バイクはもちろん旋回をはじめる。
ところがそのリーンでどれだけ曲がっていくのか、そこを自分で操れるライダーは極く僅か。
理由は簡単で車体のどこがどう動いて傾いていくのかが掴めていないからだ。とくに上半身を横へ動かすアクションは、曲がりはじめる地点も特定できず、どれだけ曲がりたいのかもなりゆき任せと曖昧。
でも結局は曲がれているので問題とは感じていない。ただ同時にこうして乗っているかぎり、リーンをどれだけしたいのかなど、自分で加減できずに操れている状態にはなれないまま。
様子見のそのとき次第、やってみなければわからない……これに慣れっこになるため、自信はつくわけがない。

でもMotoGPの肘擦りフォームは上半身を思いきり横へ移動?

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しかし上半身を横へ動かすアクションは、肘を擦るほど深くバンクするMotoGPライダーもやっていると思いがち。
ところがこれはよく見るとリーンをはじめる瞬間は顔や両肩は車体センターに残していて、曲がっていく先のイン側に構えているのは下半身だけ。
そしてリーンのきっかけは、下半身の体幹を下へ移動ではじまり、リーンがはじまるや上半身は両肩を扇状に移動させながら横ではなく下へ重心が下がるほうへ集中していくのだ。それはさらにアタマの位置も路面に近くなるまで下げて加勢するので、結果として上半身の内側の肘が路面に擦ることになる。
この横にではなく下方向というのはなぜなのか? それはバイクで一番重いエンジンの位置を考える必要がある。
エンジンはライダーの両足首あたりの高さにある。ココが車体の中で一番重く、クランクシャフトが回転する慣性力も加わるため、地球ゴマと同じジャイロ効果が働き、最も動きにくい車体の挙動の中心となる。
この部分がリーンする、つまりエンジンの居場所が扇状に動くのを妨げないのが、素早い旋回、つまり曲がりはじめるタイミングを逃さないポイントとなる。
だからクイックに曲がりはじめたいGPライダーは、体幹を下へ移動をきっかけにするし、そこからもひたすらエンジンの居場所が傾く動きに逆らわない下のほうへ加勢していくのだ。
バイクのリーンは、ハンドル位置が扇状に弧を描くイメージをしがちだが、実際にはもっと下のエンジんの居場所が小さく弧を描くのが正解というのを覚えておこう。

きっかけは体幹を下に、そして重心イメージを車体の内側で下方向を意識する

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体幹をイン側の下方向へズラす……これはかなりコツが要る小さなアクションだ。
細かく説明すると、まず脊椎が骨盤に入っているその境目が、お腹が凹んで腰が後ろへ突き出すようなカタチをつくる。
次にこの状態で上半身の重みをうけている、脊椎が骨盤へ差し込まれている部分の重心を、曲がりたい方向の骨盤にある大腿骨が入っている大きなホールのほうへイラストのようにズラすイメージをしてみよう。
腰を捻ってはNG、外から見たら何も動いていないまま、たとえば電車の中で立ったまま揺れに対応して右足から左足へ体幹移動をする、あの要領で重心を横ではなく下へ移動するのだ。
これはまず腰を落とすリーンイン、もしくはハングオンのようなアクションはまず控えて、腰をこぶしひとつくらいイン側へズラす程度の身構えにしたほうが掴みやすい。
そしてイラストにあるように、車体に身体をあずけるイメージを、リーンするに従って変えていく手順を繰り返すことで身につけていく。横ではなく下へ、これをキーワードとして忘れないことだ。
これができてくると、リーンをはじめる地点が特定できて、リーンがはじまってからの旋回の行方や曲がる強さも、下半身を軸に上半身をしなやかにあずけることで加減できるようになる。
つまり、自分でココから曲がる、どれだけ曲げる、を操れるわけで当然だがライディングに大きな自信がつく。難しそうだが、コツを掴むとそこからは身体に馴染ませるのが容易で、難しいイメージも消え去るはず。ぜひ試してみよう!