狙いを明確にアピールしないイメージ戦略が秀逸ハンドリングを埋没させた!?

1980年代のレーサーレプリカブームが終わりを告げ、各メーカーがネイキッドと呼ぶようになるトラディショナルなスポーツを模索するなか、ホンダは新しい時代を感じさせる進化版のスポーツバイクを企画することとなった。
開発テーマはスポーツバイクの原点復帰と、ネイキッドだからこそ楽しめるクオリティ感をアピールした新しい価値観のバイク。
そうした新世代への意気込みを表すため、ホンダはオンロードスポーツの称号である「CB」に排気量の数字を加えないシンプルな「CB-1」という、まさに原点復帰を表すネーミングで1989年にリリースした。



開発チームが具体的に狙いを定めたのは、サーキットよりワインディングが面白いスポーツバイク!
レプリカから派生したのではない証しに専用のパイプフレームで、全体のフォルムはコンベンショナルな、しかしオリジナリティ豊かなこだわりが感じられる大人びたバイクにしたい。
そして肝心の走りに求めたのはハンドリングの追求、面白くて正統派スポーツを感じられる一定の法則を守った高次元な特性であること。
ターゲットはリーン→旋回フルバンクのレプリカ(サーキットで求める究極)に対し、ワインディングの決め手となるのは最初のリーン、そこでの向き変えターンを最優先すれば、見知らぬ道でのコーナリングアプローチに自由度が得られ最強の武器になる……と、前のめりで開発コンセプトが詰められていった。



そして開発チームの精鋭ライダーたちが様々トライして得たスペックで車体が構成されていく。
ベースとなったCBR400RRと比較すると、まず車体重量の約35%を占めるエンジンを、車体の重心へ近づけるためシリンダー前傾角を5°起こして全体を9mm上方へ移動。
外観上このバイクの主張ともなっているパイプフレームを、CBR400RRのアルミ・ツインチューブに対し、捩れ剛性を30%ダウンしてしなやかさを狙い、逆に横剛性では20%アップして運動時の入力に対する「キレ」を演出。
因みにメインパイプはφ42.7mmのカーボン・スチールパイプ(炭素鋼鋼管)と硬い材質で組まれている。
これらの要素を車体のディメンション設定で、ロール(5%)・ヨー(10%)・ピッチ(6%)の各方向の慣性モーメントをCBRより抑え、運動性に関係するロール軸を曲がりやすいハンドリングを狙ってやや立てている。
これらの要素を反映して、ステアリングヘッドをFフォークを支持している下端が697mmと高く設定、キャスター角25°30'、トレール99mmでホイールベースが1,375mmと決定された。



エンジンはCBR400RRがベースで、DOHCをチェーンではなくレーシングマシンと同じタイミングに一切のズレがないカムギヤトレーン。
このため13,500rpmからレッドゾーンと目の覚める吹け上がり。出力はCBRと2ps差でしかなく、最大トルクは同一、そして中速域では逆+6psとチューン度合いも半端ない。
ネイキッドということで、エンジンも水冷であるのを強調するいっさいの冷却フィンを持たず、パイプフレームの空間にはデザインされたりヘアライン加工のアルミ素材を奢るなど、凛とした佇まいをみせる仕上がりだった。
ただあまりに毅然として見えるのと、街中にはやや前傾が強いポジションのため、もう少しユルさを与えたアップハンドルのType IIが、1991年モデルから追加されている。


果たして開発チームのこだわりは、キャリアのあるライダーには説得力の高い、コーナリングの醍醐味も大きな、完成度の高いハンドリングとして評価された。
しかし開発過程でこだわったテーマは、一般のライダーへ説明するにはあまりに専門的で、伝えようとすればするほど、乗るのがムズカシイ、身近なスポーツネイキッドに感じさせなくなる。
そんなリスクを冒すわけにはいかず、イメージで感じてもらう以外にない……。
意識の高いライダーが、敢えて選ぶこだわりのスポーツバイク!
曰く最新伝説、CB-1。テクノロジーが飛び交う写真やレースシーンで表現してきたメーカーにとって、感覚表現はまさにチャレンジだった。
ということで、いわば真意が伝わらないままライバルの雰囲気重視ネイキッドにシェアを奪われ、CB-1は残念ながら短命に終わってしまった。
ただその正確な運動性と共に、このクオリティの高いネイキッド・スポーツを、歴史に残る名車として名をあげるファンの存在を忘れるわけにはいかない。




