R 12 nineTは空冷ボクサー刷新とNewフレーム!
1923年、天才エンジニアのマックス・フリッツが設計した初のボクサーR32で、完成車の量産をスタートしたBMW。
今年はちょうど100年を迎える。この100周年の節目に、BMWはいまも開発生産を続けるボクサーでR nineTの後継機種 R 12 nineTのリリースと、R 18の新シリーズR 18 Roctaneを加えると発表した。
既に100周年を記念した限定モデルがいくつか発表されていて、希少な限定デザインなど目を楽しませてくれていたが、R nineTに後継機種が存在するのを知らされたのには、正直驚いたファンも多いはず。
詳細は秋以降に発表されるようだが、実車の画像が発表されたのを機に、その違いと予想される展開をチェックしてみよう。
水冷R1250系と袂を分け新しい礎を築いた空冷RnineT
現在のボクサーは、8年前に水冷化され吸排気の方向が上下になったR1250(1200)系と、それまでR1100以来の空(油)冷で吸排気が後→前のタイプを継承したR nineT系とに分かれる。
その空冷エンジンのほうを搭載したR nineTが、90周年の2013年にクラシック・ロードスターといった新たなカテゴリーとしてスタートを切った。
このR nineTシリーズ、ルックス優先のクラシカルな雰囲気バイクに見えそうだが、乗れば伝統の安定感と適度な軽快感、そしてどんなときにもライダーを脅かさないレスポンスと、楽しめる逞しいトルクの意外なほどスポーティなキャラクター。
しかもボクサーならではの、ビギナーでも容易にタンデムできる懐の深さが魅力だ。
パフォーマンスとサバイバル性で群を抜くベテラン好みのR1250R系とは一線を画しているが、新しいもうひとつのボクサーとしてファンを獲得しつつあった。
将来へ向かって空(油)冷存続をアピール!
そしてまさかのR noneT系を世代交替と、水冷化せずとも刷新していく姿勢を見せたことに、多くのボクサーファンは飛び上がらんばかりに喜んだと思う。
ヘッドカバーの点火プラグコードを覆うカバーデザインが刷新され、エンジンが設計から見直されているのが伝わる。吸気系でエアボックスの変更や排気系も大きく違っているとのこと。
またフレームも、シートレールを含むサブフレームをボルトオンとして、シングルシートやオフ系のスタイルに重装備パッキング等々、今後にカスタムやバリエーションを拡げる可能性を持たせた構成へと完全に再設計されている。
他にも燃料タンクが、ファンの多かったR90系や、'60年代の/5を加えた系統の曲面を採り入れたフォルムとなっていたり、スポーク仕様をチューブレス化への対応を一歩進めた新ホイールだったり、テールランプまわりの1体化によるカスタマイズ対応、トラディショナルな2連円形メーターをデジタル化と融合させるなど、懐古趣味ではなく円熟させてきた経験を活かしている。
100周年でトラディショナル路線を活性化
R nineTでトライしたクラシック・ロードスターのカテゴリーは、いっぽうで300km/hの超弩級ハイパフォーマンスの先鋭化を見据えてきたBMWとして、むしろニーズとして必然のエリアを意識しているようにみえる。
それはR 12 nineTの細部をチェックするにつけ、100周年という節目の記念車ではなく、この節目から先々までスポーツバイクを存続させるための新たなコンセプトづくりを感じさせる。
そこには排気ガス規制をはじめ、空冷ではクリアできなくなったとする日本メーカーとは完全に次元の異なる、人間の大事な生き甲斐としてのモーターサイクルを創り続けるフィロソフィを構築しているのは間違いない。
'90年代に一度は撤退を決めたボクサーエンジンを、懐古趣味ではなく必然まで磨き上げると宣言をしていた当時のエンジニアたちの言葉を思い起こさせる。
R 18系も既に発表された限定車に加え、R 18 Roctaneも今秋に詳細を発表するという。
2023年の100周年を新たな可能性を積み上げる節目にしようと、ムーブメントが生みだすBMWの今後が楽しみだ。