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Q.経験の浅いライダーはサス調整せず、メーカーの設定に慣れるのが先決ではないですか?【教えてネモケン122】

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バイクに乗りはじめて日が浅く、何をするにも自信がありません。
でもビギナーであってもサスを柔らかく調整したほうが
早く馴染めて楽しく乗れるとアドバイスされてますね。
シロウトがワケのわからない調整するより
メーカーが多くのライダーに合うよう設定した状態で走り、
それに慣れるほうが正しい乗り方が身につくように思えます

A.新車でセットしてあるサス設定は、使われ方の想定がハードで乗りやすさを優先していません。

大型のスポーツモデルほど、実際には遭遇しない条件への対応で重く扱いにくい設定にしています。

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バイクに慣れていなければ、どこを調整したからどう良くなるなど、わかる筈もありません。
でも不慣れだからこそ、過剰に怖かったり不安に陥りがちなネガティブな気持ちを和らげることで、何とか乗りながら短い時間でこうしたからこうなったといった、自分で操る実感を少しでも積み上げることが大事です。
それにはメーカーのサス設定で邪魔をしている部分を取り除くことで早く慣れることができます。

まず新車を出荷するときのサス設定が、必ずしもベストではない理由から触れましょう。
確かにメーカーは開発の段階で、様々に条件の異なるテストを繰り返し、ライダーの体格やキャリアで変わる特性を検証しています。
しかし最終的に設定を決めるとき、PL(製造者責任)問題への配慮でハンドリングを重く扱いにくいモノにしてしまいがちなのです

とくに欧米向けの大型スポーツバイクは、たとえば100kg近い体重のライダーが2名でタンデムして、高速道路で140km/hの速度でカーブを通貨したとき、路面の継ぎ目の段差でグラグラと大きく揺れ恐怖を感じたら、PL問題として訴訟になるかも知れません。
そうならないよう、そんな条件でもグラつかない硬く動きにくい設定を選びます。
他にも滅多に起きない乱暴な使われ方で問題が起きにくい仕様にしがちです。

不慣れからくる怖さや不安を減らし、何とかできそうな気持ちにするのが先決!

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ところがこうした硬く動きにくいサス設定は、たとえば重く大きな鞄で把手が固定式だと持ち運びにくいのが、可動式だと持ちやすく軽く感じたりするのと同じで、車体を傾けたりする操作で動きにくい頑固さを感じさせてしまいます。
つまり日本国内でビギナーが絶対に遭遇しない条件に合わせたサス設定は、もっと動きを柔軟にすることで、本来の乗りやすい状態にすることが可能なのです。

たとえばオフロードモデルでは、悪路での路面追従性や衝撃をやんわり吸収するため、大きくストロークするサスペンション設定にしてあり、これをフツーの舗装路で乗ると軽快で神経質な面がまるでない乗りやすさを感じます。
これは前後のサスが大きくストロークすることで、ライダーの車体の傾け方が微妙なアライメントに不都合な方向へ入力しても、サスペンションの動きで緩和して軽快なハンドリングを妨げにくいからです。

このように柔軟で良く動くサス設定は、軽快で馴染みやすい、言い換えれば緊張や怖さを緩和する効果があるというワケです。
ビギナーはこの設定のほうが早くバイクに馴染めますし、キャリアがあるライダーでもこのほうが快適で疲れないハンドリングになるのは当然です。
通常の使われ方で日本国内では絶対に起きない状況に備える意味などない筈です。

リヤサスのプリロードを緩めれば、
乗りやすさだけでなく足つきも良くなります!

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それでは簡単なサス設定の変え方に触れておきましょう。まず手をつけやすいのがリヤサスのプリロード調整。
これは予めスプリングを縮めている締めつけ量(プリロード)を調整します。
車体の外にある2本サスも、シート下にある1本(モノ)サスも、締めている座金を回転させることで弱めたり強めたりができます。

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車載工具に専用のフックレンチがあればそれを引っ掛けて回すか、座金に小さな穴がついているタイプであればそこへ車載のドライバーの先を突っ込んで回すかで調整できます。
高度なメカニズムなタイプだと、座金が2枚でお互いを締めてロックしていますのでフックレンチが2つ必要なので、ショップにお願いするか高価ではないので購入するのも可能です。

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最近ではリプレイス(後から変えるカスタムパーツ)製品にしかついていなかった、油圧でノブや専用ツールで回転させて手軽にプリロードを変えられる仕様もあります。

2本サスだと5段階ある調整幅で3段目か2段目の弱めな位置が多いですが、たとえ1段階でも弱めると少し軽快になるのと、ちょっとだけですが足つきも良くなったりします。

また体重が50kgそこそこと軽量で慎重も160cm以下であれば、WEBやYouTubeで紹介しているスクーデリアオクムラのようなサスペンションの専門ショップに思い切って相談してみましょう。スプリングをもっと弱い設定か元の長さをカットしてもらうと、足つきも安心で軽快さが明確に増え乗りやすさは雲泥の違いになります。

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スーパースポーツのように高度なマシンだと、フロントフォークにもプリロード調整がありますが、これはリヤほど車高を下げる効果はなく、素早いリーンでフォークがどこまで沈んで路面追従性を損なわず動作するかなど、キャリアのあるライダーがサーキットを走るときに調整するので、ビギナーやツーリングで乗るライダーなら気遣う必要はありません。

サスの機能でダンパーという減衰力の特性でも、
弱めたほうがビギナーには乗りやすくなる場合がほとんどです!

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またサスには減衰調整というサスがオーバーにストロークしたときに落ち着かせるダンパーのアジャスターがついている場合もあります。
これもプリロードのように、標準設定より弱めたほうが良く動くようになって乗りやすくなります。主に伸び側と呼ぶ機能が大事で、圧縮側は高度な調整なのでビギナーは気にせずで構いません。

どこまで弱めて良いのか、調整範囲が無段階だったりするとわかりにくいでしょうが、調整機構はメインの減衰力を発生する仕組みとは別に、調整用の通路で機能していたり、メイン側でもアジャストできる範囲が限定的なので、最も弱い位置から乗りはじめても大きく不都合な状態にはなりません。

いずれにせよ、やんわりと良く動く柔らかいサスペンションのほうが、ライダーの不慣れからくる車体に不都合な動作で妨げるのを防いでくれます。速いライダーは足回りを硬くしているといったイメージは勘違いで、MotoGPマシンでもコーナーで暴れてみえるのは、ライダーが乱暴に扱っているからでなく、滑ったときなどリカバリーしやすい状態にするため敢えて柔らかくしているという事実を知っておいてください。

またサスペンションを調整したりすると、元のメーカー出荷時の標準位置をがわからなくなっては困ると思う人も、説明書に記載があるか、メーカーに問い合わせれば必ず教えてもらえるので心配する必要はありません。調整幅も危険な動きになる範囲には及ばないので、安心して思いきり調整してみてください。

またこのライダーが乗車して体重で予めサスが縮む状態、専門的にはリバウンドストロークとい予め沈ませておく量は1G’といって、ある程度スポーティに操れるようになったとき、バンクして路面によってはリヤタイヤが滑りはじめた状態で、そこから転倒を誘発しないよう粘ってくれるか否かを左右するなど、実は重要な設定でもあるのです。
基本の理屈を説明したイラストを加えておきますが、本格的なスポーツモデルを乗るライダーは、このRIDE HIでもサグ出しで検索すると細かい調整の方法を説明してるのでぜひ参照してください。

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