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このバイクに注目
YAMAHA
SRX400/600
1990model

SRX400/600(3SX・3NY)は2本サスをやめスーパーモノの領域となったのが好まれず……【このバイクに注目】

オイルタンクを左前に移動、フレーム・足まわりとラジアルタイヤで大幅刷新!

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1985年にヤマハがリリースしたSRX400/600(SRX-4、SRX-6)は、ご存じトラディショナル単気筒の象徴となったSR400/500とは異なり、新しいXT400/600系をベースに次世代シングル・スポーツとして開発。
当時の最新スポーツバイクが採用する角形パイプフレームや、ツインキャブのSOHC4バルブはオイルタンクをエンジン後ろのフレーム内側へ収め、独自のショートマフラーや曲面を駆使したデザインフォルムなど、こだわりのファンに刺さる仕様でデビュー、400cc以上の単気筒スポーツは売れない神話を崩す生産台数で一躍人気モデルとなった。
以来2度のマイナーチェンジを加えた後、1990年に新世代へとフルモデルチェンジされることとなった。
狙いはヨーロッパで気運が高まっていたスーパーモノ、いわば単気筒のスーパースポーツと呼べるハイパフォーマンスな新しいカテゴリーだ。

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リリースされたNewSRX400/600は、基本的に同じようなフォルムを纏いながら、すべてにパフォーマンスを思いきり高い次元へと引き上げた仕様で、シングルファンのみならずキャリアを積んだライダーを唸らせた。
エンジンは96.0mm×84.0mmの608ccと87.0mm×67.2mmの399cc。
42ps/6,500rpmと4.9kgm/5,500rpm(33ps/7,000rpmと3.4kgm/6,000rpm)で、より中速域で力強い特性へと向上。
ただリヤサスを1本サスとしたことから、前モデルのオイルタンクのスペースがなくなり、思いきってエンジン左前に移動して容量も400cc増量、この位置となることで最大負荷で20℃近く油温を下げている。
キャブレターは従来と同じダイレクトなVMタイプと負圧作動のSUタイプを2連装。
またキック始動だったのをセルモーターのみとしている。
フレームはモノサス採用とラジアルタイヤ採用に合わせ、剛性面を全面的に見直してメインフレームを40mm×20mmの縦長へ断面から改め、ステアリングヘッドまわりを大幅に剛性アップ、またダウンチューブなど接合部の断面を平滑にするなど細かな調整で2kgの軽量化えお果たし、スイングアームもアルミ引き抜きで700gの軽量化を果たしていた。

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そして狙ったスーパーモノのカテゴリーに迫るハンドリングを追究、フロントまわりの剛性アップと重量配分の50:50に近づけたことから、キャスター角24°35'とトレール92mmとレプリカ系と同じようなアライメント設定としたのだ。
その結果、コーナリングでフルバンクが得意で旋回安定性が抜群の、いかにもヤマハらしいスーパーハンドリングが堪能できる、まさしく傑作マシンと表現するに相応しい完成度の高さを誇った。

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ただこのこだわりをどう伝えて良いか、当のヤマハもかなり悩んだようで、過激ではないオトナのスポーツ且つ、本気を出すと4気筒を追い回し抜き去るばかりのポテンシャル……これをオブラートに包む広告表現が重ねられていった。
2本が出ているエキゾーストパイプを、ステンレス製としてこんがりキツネ色の焼き色をつけたり、サイドカバーを敢えてアルミ製で表面をエレガントさが伝わる処理ととするなど「大人テイスト」を意識させた。
全体のデザインも初期型のフォルムを踏襲しながら、より深い立体感をあしらうのに凹んだ曲面をタンクに採り入れる斬新さを強調していた。
ところが優れたアライメントやレーシングマシン並みの重量配分設定など、路面追従性の高さをベースにとてつもないコーナリング・ポテンシャルだったが、果たしてシングル・ファンの心には響かなかったのだ。
「2本サスがカッコよかったのに姿も見えないモノサスはカッコ悪い」「厚化粧のなまめかしい曲線美は好きになれない」等々、開発エンジニアたちが精魂込めて仕上げた4気筒にも負けないスポーツ性!というパフォーマンス狙いは、SRXファンには大きなお世話だったようだ。
かくしてトラディショナルと粋なデザインで初期型SRX400/600が気に入っていたファンから離反を被る評判となり、新型世代は意外なほど売れないモデルとなり、まさかの短命に終わるのだった。
ヤマハでは1995年にイタリア製で現地開発されたSZR660がリリースされたが、SRXの結果から日本国内向けには検討されず仕舞い。 シングルのスポーツはヒットしないという神話は、SRX初代が一瞬崩したかに見えたが、この世代でこれまで通りの呪縛に飲み込まれてしまったのだ。