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このバイクに注目
SUZUKI
GSX1400
2001~2009model

油冷で最大排気量ネイキッドのGSX1400!【このバイクに注目】

Photos:
スズキ

ビッグネイキッドに似合うのは油冷!

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1990年代からビッグネイキッドのカテゴリーは、カワサキのゼファー1100やホンダCB1000、ヤマハXJR1200と大きいことが魅力という流れを生み、ホンダCBとヤマハXJRは1300ccへとこぞって排気量をアップ。
スズキはこれに対抗する新たなビッグネイキッドとして、GSX1400と最大排気量を投入することを決めた。

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そうなると選択するエンジンは独自の「油冷」。最大排気量ながらコンパクトにできて、運動性などスポーツ性でも優位になるからだ。
スズキにはこの時点で既に「油冷の1200 BANDITとGSX1200 INAZUMAの2機種が市販されていたが、これらのモデルとベースは共有化しながらエンジンの外観や内部の仕様にも相応の進化を伴う開発に着手した。

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1985年のGSX-R750に初めて搭載された「油冷」は、潤滑オイルを大型のオイルクーラーで冷却すると誤解されがち。
その燃焼室の外壁へ、独立した潤滑用とは別の高圧オイルポンプでジェット噴射、燃焼室外壁の境界層という表面の高温を吹き飛ばす特殊な冷却方法だ。
たとえば寒いとき両手に息をゆっくりかけると暖まるのに対し、同じ温度の息でも強く吹きかけると冷やすことができる、その原理を応用している。

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GSX1400はボア81mm×ストローク68mmで1,402ccまで拡大。
最大出力が74kW(100ps)/6,500rpm(輸出用は105ps/6,800rpm)、126Nm(12.8kgm)/5,000rpmと、とてつもない強大トルクのエンジンだ。
電子制御フューエルインジェクションには、スロットルがライダーがダイレクトに開閉するバタフライと、もうひとつ吸気の負圧を感知して補助的な開閉をするバタフライを持ったSDTVという最新装備も奢られていた。
因みに車重は乾燥で228kgと、リッターオーバーでは油冷ならではの最軽量に収まる。

境界層高圧噴射冷却で最期の油冷、しかし継続を断念……

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2001年にリッターバイクでは珍しく日本国内向けのK1からリリースされたGSX1400は、翌年から欧米をはじめ各地へデリバリーされた。
そのカラーリングもイヤーモデルでバリエーションが変わり、輸出用ではブルーやホワイト単色のモデルもラインナップ。

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また特別仕様として2005年に黒一色を纏ったGSX1400Zが登場、2本に振り分けていたマフラーを4-2-1と右側へ集合した1本マフラーとした。
ただこのZ仕様の1本マフラーは、同じ2005年モデルでも採用され、最終モデルの2009年までこの仕様が継続していた。。

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とはいえ「油冷」も23年が経ち、迎える2008年の新しい規制をクリアして延命するか否かを問われるタイミングがやってきた。
空冷のひとつではあるが、航空機や一部のレース用4輪エンジンでしか例のなかった「油冷」が、一般で使われるエンジンで採用されたのは稀なこと。
水冷化せずとも高性能で軽量コンパクトなエンジンとできるメリットが、まだまだ活かせるのはGSX1400が立証してみせた。

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しかし、これほどまで高度なメカニズムをファンが理解して選択しているかといえば、残念ながら「油冷」が購入理由になるほど知られていなかったのも事実。
潤滑オイルを高圧でジェット噴射して、燃焼室外壁の高温な境界層を吹き飛ばす、スズキ独自の「油冷」は、残念ながら2009年の生産をもってその幕を閉じることになった。