イギリスで誕生し、後にインドへ拠点を移していたブランドがロイヤルエンフィールドだ。近年はその両国に研究開発センターを設立。ミドルクラスのカテゴリーでは世界屈指のシェアを獲得するなど、目覚ましい躍進を続けている。そんなロイヤルエンフィールドから登場した「INT650」とは?
イギリスに拠点を置いていたロイヤルエンフィールドが、バイク製造の分野に進出したのは1901年ことだ。現在も名を残すブランドとしてはインディアンと並ぶ最古の歴史を誇り、この後、1902年にノートンとトライアンフが、そして1903年にハーレダビッドソンとハスクバーナが続く。
紆余曲折あって、イギリス本国では1970年に稼働停止を余儀なくされたわけだが、それ以前に設立されていたインドの現地法人が事業を引き継ぎ、ブランドは存続。現在はさまざまな四輪ブランドを有するインドの大手企業アイシャーグループの元で、躍進を続けている。
そんなロイヤルエンフィールドが、2018年に発表したハイエンドモデルが「INT650」(本国名:INTERCEPTER650)と「コンチネンタルGT650」だ。インドでは長い間、単気筒モデルのみが手掛けられていたが、この両モデルには初の並列2気筒エンジン搭載され、大きな話題を呼んだ。ここではまず、INT650の詳細を見ていこう。
Royal Enfield INT 650 ベイカーエクスプレス
カラーバリエーションは全6種類。スタンダードがオレンジ/シルバースペクトラ/マークスリー、カスタムがラビッシングレッド/ベイカーエクスプレス(今回の撮影車両)、そしてスペシャルがグリッター&ダストというラインナップだ
わずか2500rpmでトルクの大部分を発揮
その前にちょっとした豆知識をひとつ。日本では「INTERCEPTER」という響きに、馴染みを覚える人も多いだろう。1980年代にホンダが開発し、特にアメリカのレースで活躍した「VF750F」や「VFR750F」のペットネームである。その名は直近の「VFR800F」にも引き継がれ、アメリカと日本では商標が登録されている。そのため、このふたつの国では「INT650」と改名し、リリースされているのだ。
既述の通り、エンジン形式は並列2気筒だ。排気量は648ccで、ボアとストロークはそれぞれ78mm×67.8mm。相対的にはビッグボア・ショートストロークに属する数値と言っていい。例えばカワサキW650のそれは、72mm×83mmだった。
とはいえ、決して高回転指向ではない。わずか2500rpmの時点で最大トルクの80%に達するなど、その特性はフレキシビリティに富んだものだ。最大トルクは、52Nm/5250rpm、最高出力は47bhp/7150rpmを公称する。
クランクシャフトは270°の位相角を持ち、カウンターバランサーが内蔵されている。これによって、振動の軽減と小気味いいサウンドを両立。燃料供給はボッシュのマネージメントシステムとインジェクターを介して行われる。
フレームの設計は、あのハリス
一定の年代のライダーにとって、心躍るのがフレームだろう。なぜなら、形式自体はスチールパイプで構成されたダブルクレードルながら、その設計はハリスパフォーマンスが手掛けたものだからだ。ハリスはドゥカティのレーサー、ノートンのロータリーマシン、スズキやヤマハのエンジンを搭載したGP500マシンなど、歴史の折々で登場してライダーを支えた名門フレームビルダーだ。現在はロイヤルエンフィールドと同じ、アイシャーグループの傘下にあり、そのハンドリングを担っているのである。
サスペンションとホイールは、そのトラディショナルなスタイルに見合ったものがチョイスされている。フロントにφ41mmの正立フォーク、リヤにはピギーバックタイプのツインショックを装備。ホイールは前後ともに18インチのアルミリムを採用し、均整のとれた伸びやかなボディワークを支えている。
INT650にあって、コンチネンタルGT650にないものは、アップライトなバーハンドルとフロント寄りにセットされたフットペグだ。これによって、疲労の少ない快適なライディングポジションを実現。街乗りからツーリングまでこなせるスタンダードモデルに仕立てられている。
ブレース付のバーハンドルを装備する。グリップ間の幅は、実測で約765mm(バーエンドのウェイトは含まず)。高く、ワイドな設定のため、車体の引き起こしや取り回し時は力を入れやすい
Vol.2では、そのインプレッションをお届けしよう。