意表をついたZ1-RデザインがカワサキZの新しいトレンドに!
1972年に世界で量産されていなかった900ccのDOHC4気筒で大成功を収めたカワサキ。
しかし王座に君臨していられた時期が長く続いたわけではなく、スズキのGS750/1000などスポーツ性を強調するライバルの猛追がはじまり、1976年には対抗手段で排気量も1,000ccまで拡大していた。
とはいえ性能的に目覚ましく差があるまでになっていなかったこともあり、よりパフォーマンス・イメージを掲げることが急務となった。
そして登場したのがZ1-R。ビキニカウルから燃料タンクにサイドカバーやテールカウルまで、900SuperFour/Z1の丸みを帯びた貫録たっぷりのデザインから、尖った印象を与える直線基調へとガラリと大きく変えてデビューしたのだ。
狙いとしては、ちょっと異様なムードも醸し出そうと「バック・トゥ・ザ・フューチャー」に登場したDMCデロリアン(ジウジアーロのデザイン)に感化された直線基調で、果たしてこれまでモーターサイクルには少なかったこのトーンは、Zシリーズのイメージチェンを意識させて注目を浴びることとなった。
ボア×ストロークが70 mm × 66 mmの1,015cc、圧縮比8.7:1から90ps/8,000rpm、8.7kgm/7,000rpmのパフォーマンスは、高速域でのウォブルなど車体がパワーに対応しきれず、フレームのダウンチューブを二重鋼管として対策したZ1R-IIがリリースされることとなった。
剛性に優れたこのフレームは評価も高く、ビキニカウルを取り去ったZ1000MKIIが同じ仕様であるため価格も手頃で優れたハンドリングとしてヒット商品となったのだ。
またZ1-Rでは容量の少なかった燃料タンクも大きくしたことで、1000MKIIをはじめシャフトドライブのZ1000STも、このZ1R-IIをベースとしたデザインで統一されていたことも、イメージを高めていたのは間違いない。
GPzの時代まで直線基調が繋いでいくことに!
そしてご存じ、国内向け750cc版では、MKIIが商標として使えなかったこともあり、次期戦闘機を意味するFXがこのシリーズのネーミングとして与えられた。
Z1000MKIIと同じダウンチューブを二重鋼管としたフレームの安定性は抜群で、大型バイクのハンドリングのリファレンス・モデルと言われるまで信頼性が高かった。
ただ1980年からのZ750FX-IIは、650ccザッパーの排気量をアップしたモデルで、エンジンもシャシーも全く異なる。
1981年にFXIIIとなったバージョンも、燃料タンクが角Z風に直線基調へ戻されたが、同じく650ccベースで1978年からのFXとは異なる仕様だ。
その後もフューエルインジェクション化された1980年のKZ1000や、ベーシックなキャブレター仕様でパフォーマンスを高めたZ1000Jが、その後にローソンレプリカのベースモデルとなるなど、角Zは走り屋ライダーに好まれるバイクというイメージが定着していった。