高機能な開発の傍らでマイノリティ好きな感性のファンにも応えるカワサキ!


1985年、カワサキはライバルたちのレーサーレプリカに迎合しない、フルカバードボディのGPZ400Rをリリースした。
ただ驚いたことに、その新たに水冷化したDOHC16バルブ4気筒を搭載した、カウルレスのFX400Rもデビューさせたのだ。



いっぽうその新エンジンを使ったGPZからカウルを外したFX400Rも開発、同じ1985年にリリースしたのだ。
初の水冷化されたエンジンは、56mm×40.4mmと空冷世代よりショートストローク化、398ccで59PS/12,000rpmと3.6kgm/10,500rpmを発揮、しかも思いきりコンパクト化するなど空冷より1kg軽量化していた。
ところがエンジンは共有していたものの、GPZ400Rの特徴的だったアルミ製AL-CROSSフレームではなく、スチール製角断面パイプによるダブルクレードルに搭載とオーソドックスな仕様だった。
また排気系もGPZとは異なり、中速域のトルクが逞しい4into1と集合管の右側片方出し1本マフラー。
一見して外装がほぼ同じに見えるが、シートカウルなど細かくデザインを変えていた。

FX400Rのコンセプトは、カウルのないバイクに乗り続けてきた多くのライダーにとって、エアロフォルムのフルカバードボディだと、運動性でどこかもどかしい部分が残る……このスポーツ性をスポイルする感性を容認しないファンは少なくない筈。
カワサキ社内にはそうした声があり、シンプルで軽快な動きのカウルレス版を、アンチ・カウル派に向け併売しようという考えにまとまったというのだ。

実はGPZ400Rの輸出モデルGPZ600Rがスチール製角断面だったので、これをベースに専用設計できたという裏ストーリーもあるのだが、AL-CROSSがエンジンをとり囲んだルックスがカウルレスにはあり得なかったという。
男カワサキと象徴的にいわれるように、フルカウルの洗練されたルックスはカワサキらしくない!と社内でさえ思う派閥があると聞かされたときはさすがに驚いた。
ひとつ前の空冷GPz400で、カウルを外したGPz400F-IIを追加して人気となった実績も、FX400Rの企画を後押ししたという。



そして、ご存じのようにエアロフォルムのGPZ400Rは絶好調で、レプリカ勢を尻目にトップを独走。
いっぽうカウルレスのFX400Rは期待したほど注目が集まらす、いまひとつパッとしないものの根強いニーズに継続モデルとなり、1987年モデルからは排気ガス規制への対応も兼ね、後のGPX エンジンと仕様を共有して59PS→57PSとタウンユース寄りにチューンし直している。
こうしてGPZ400Rが人気で再生産されたのに付き合うように、FX400Rも1990年までカタログから消えなかった。