RIDE HI × ヤングマシン
RIDE HIとヤングマシンがムルティストラーダV4Sの魅力を違う視点から探っていく、この企画。
今回は、ドゥカティの中でのムルティストラーダV4Sの役割を探る。
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イタリアで開催されるWDW(ワールド・ドゥカティ・ウイーク)に行ったことがある。日本にいると信じられないと思うが、そこに集まるバイクの多くのドゥカティがムルティストラーダ。オーナーは会場であるミサノサーキットのパドックにほぼ自由に愛車を止めることができるのだが、見渡す限り本当にムルティ、ムルティ、ムルティなのだ。
世界でいちばん売れているドゥカティ=ムルティストラーダ、それを実感した。話を聞くと、スペインから来た、ドイツから来た、スイスから来た……国と国を繋げて走れる欧州ならではのライダーばかりである。
「ロングランができるドゥカティ」スポーツイメージが強かったドゥカティがそんな新たなる新境地を見事に開拓。こうして鍛えられているムルティストラーダはモデルチェンジのたびに強くなっていく。
イタリアンデザインのデュアルパーパス、それがムルティストラーダだ。他メーカーにはない上品さがあり、その中に逞しさが宿る
V4エンジン搭載で、「4 Bikes in 1(4種類のバイクを1台に集約)」コンセプトが昇華
2003年に登場した第1世代のムルティストラーダは、空冷Lツインエンジンを搭載。電子制御もなく、モンスターよりも足長なスポーツネイキッドという印象だった。
2010年の第2世代のムルティストラーダ1200シリーズではDVTの水冷Lツインエンジンを搭載し、ライディングモードも完備。2015年モデルからの第3世代はDVTの水冷Lツインエンジンを搭載したムルティストラーダ1260シリーズとなり、バリエーションを変更しながら2020年まで生産。
こうしてムルティストラーダは、これまでに10万台以上が販売されてきた。
第2世代からは「4 Bikes in 1」コンセプトを打ち出し、電子制御全盛期に突入。当時、撮影には4種類のウエアを用意して、4種類の場所に行ったのを思い出す。
「スポーツ」「ツーリング」「アーバン」「エンデューロ」ボタンひとつでエンジン特性とハンドリングがガラリと変わるこのコンセプトは、ドゥカティの用途を大きく広げてくれた。
例えば「スポーツ」モードではサスペンションが硬くなりエンジンレスポンスが向上、「アーバン」モードではサスペンションが柔らかくなりエンジンもマイルドになるのである。
新しいムルティストラーダV4は第4世代になる。「4 Bikes in 1」コンセプトを徹底追求し、4つすべてのシーンでこれまでにない快適性をライダーに提供。それにはV4エンジンと電子制御の巧なマッチングが欠かせなかった。
MotoGPなどトップエンドで培われた電子制御技術が快適性追求のために波及し、日常のスピード域で恩恵を受けられるようになっている。
また、V4エンジンはアイドリング時にリヤバンクの爆発を休止させて、ライダーを熱から守るシステムも搭載。
Lツインよりもフレンドリーにするためにドゥカティはムルティストラーダ にV4エンジンを搭載したのである。新しいムルティストラーダV4を知るほどにそう思う。
「スポーツ」「ツーリング」「アーバン」「エンデューロ」4種類のシチュエーションに合わせてそのキャラクターを使い分けることが可能。そんな発想のバイクはムルティストラーダ が初めてだった。シチュエーションだけでなく、ライダーやタイヤの種類やコンディンションでも使い分けられる
主軸をロードバイクからデュアルパーパスへシフト!
新しいムルティストラーダV4を目の前にして思ったのは、かなりデュアルパーパスよりになったということだ。
これまではエンデューロモデルなどは前19インチタイヤだったが、主流のモデルは前後17インチタイヤを装着。しかし、ムルティストラーダV4は、前が120/70-19、後ろが170/60-17となっており、完全にロードバイクから脱却しているのだ。
しかし、面白いのは前輪が大きくなっているのに車体全体はコンパクトになっていること。LツインよりもコンパクトなV4エンジンを採用することで、よりデュアルパーパス向けの車体を作れるようになったのである。
ムルティストラーダ は巨体だから……写真からは確かにまだまだそんな印象を受ける方も多いと思うが、是非とも実車を見て跨っていただきたいと思う。
「ロングランができるドゥカティ」は、V4エンジンを搭載し過去にない進化を果たし、パフォーマンスと快適性を大幅に拡大。冒険バイクとしての資質を丁寧に磨き込んできた。
ベスト・ムルティストラーダ、そう呼ぶにふさわしい完成度を見せる。その車名の通り、すべての道を制することのできるドゥカティ、それがムルティストラーダV4シリーズだ。
コーナリングライトを装備。狭い路地などでも体感することが可能で、ライダーが「照らして欲しい」と思った場所が明るくなる
スクリーンは高さ調整が可能。シチュエーションや体格に応じてライダーの防風効果を最大限に高めることが可能
夏場でもライダーの快適性を維持するため、風の流れを徹底研究。フロントカウルにはダクトが設けられ、ライダー周囲のエアフローを制御。ウイングはダウンフォースを発生させると同時にラジエターの熱をライダーから遠ざける効果がある
この4気筒エンジンのいちばんの驚きはLツインよりも軽いことだ。スペックと扱いやすさを両立させつつ、最低地上高を確保するための形状を採用。振動も軽減され、静粛性もアップ。それでいて遠くからでも「ドゥカティが来た!」という存在感はあるという
世界初のレーダーシステムを搭載。これで長距離走行がより楽になるに違いない。メンテナンス距離も長いため、まだ行ったことのない場所に足を伸ばして見たいライダーにオススメしたい!
※すべてのカラーでキャストホイールモデルとスポークホイールモデルがあります。
レーダーを用いた新しい運転補助システム
SPEC
- 総排気量
- 1,158cc
- ボア×ストローク
- 83×53.5mm
- 圧縮比
- 14対1
- 最高出力
- 170hp 125kW/10,500rpm
- 最大トルク
- 12.7kgm 125Nm/8,750rpm
- 変速機
- 6速
- フレーム
- アルミニウムモノコック
- 車両重量
- 240kg
- キャスター/トレール
- 24.5°/102.5mm
- サスペンション
- F=テレスコピックφ50mm倒立
R=スイングアーム+モノショック - ブレーキ
- F=φ320mmダブル R=φ265mm
- タイヤサイズ
- F=120/70ZR19 R=170/60ZR17
- 軸間距離
- 1,567mm
- シート高
- 810〜830mm
- 燃料タンク容量
- 22L
- 価格
- 288万円〜