ボタンひとつでバイクを乗り換えるような感覚。走るシーンや自分のコンディションでモードをセレクト
最新の電子制御技術は凄まじい。しかもそれはトップエンドの走りだけでなく走り出した瞬間から活用できるのだ。
スライドやウィリーを抑えマシンと格闘するように操る豪快な走り……電子制御と聞くとMotoGPのそんなアグレッシブな走行シーンを思い浮かべる方が多いかもしれない。しかし、実際にサーキットでそんな走りをするライダーは極くわずか。そんな限界域で電子制御の恩恵を知っているライダーには今さら説明の必要もないだろう。
パニガーレV4Sの電子制御で最も身近に使えるのは、クイックシフターだ。走り出す時にクラッチレバーをリリースしたら、あとは停止する時までレバーを握る必要はない。左折時の小回りやUターンの時、渋滞の時などは後輪の駆動を意図的に切りたいためレバーを握るが、通常走行時はアップもダウンもシフトレバーを上げ下げするだけだ。
次はライディングモード。パニガーレ V4Sには「レース」「スポーツ」「ストリート」の3モードが用意されている。エンジンのパワーやレスポンスだけでなく、サスペンション の特性が大きく変わるため、まるでバイクを乗り換えたかのように違うバイクになるのだ。
エンジン特性だけでなくハンドリングも変わる
モードは走行中でもスロットルを戻していれば変更することが可能で、その操作は直感的にできる。ただ、通常走行時は「ストリート」が無難だ。これが一番エンジン特性も穏やかで、サスペンションもソフトになるからだ。
「ストリート」という表記だから分かりにくいがこのモードの使うシチュエーションは実に幅広いので以下にあげてみた。
- その名の通り市街地(スロットルレスポンスが穏やか)
- ウエット&落ち葉や砂利の悪路路面(トラコンやABSなどの介入度が高い)
- 朝一や秋冬の休憩後のタイヤが冷えている時&タイヤが減っている時(トラコンやABSなどの介入度が高い)
- 乗り出したばかりの状態(身体の緊張を柔らかいサスペンションがいなしてくれる)
- ツーリング帰路の疲労時(スロットルレスポンスが穏やか)
ようはバイクからライダー側に歩みよってもらうということだ。昔ならサスペンションをシチュエーションごとにセッティングし直さないといけなかったことがボタン一つでできる喜びはとても大きい。
MotoGPという最高峰のレースシーンで培われた技術はすべての一般のライダーが体感できる時代になっているのだ。これが最新のバイクを楽しむ理由といってもいいだろう。
ドゥカティのスーパーバイクだからといって「レース」や「スポーツ」モードで走る必要はない。公道であればこの2つのモードはあくまでも“味見”で十分なのだと思う。
メーター内には様々な情報を網羅する。1万3,000rpmで214psを発揮するが、そんな大パワーを使い切るのはプロでも無理。ただ電子制御を上手く活用することでMotoGPフィーリングを味わうことは可能だ。もちろんデフォルト以外にも様々なセットアップができるため、自分の好みを探っていただきたい
「レース」モード。トラコンやウィリーコントロールなどの介入が少ない。エンジンレスポンスもよく、もちろんフルパワー
「スポーツ」中間のモードだが十分な速さを発揮。「ストリート」に物足りなくなったらステップアップ
「ストリート」あのパニガーレがマイルドにしてしまうモード。まずはこのモードで車格やリーンのタイミングに慣れよう
SPEC
- フレーム
- アルミフロントフレーム
- 車両重量
- 195kg
- ブレーキ
- F=φ330mmダブル R=φ245mm
- タイヤサイズ
- F=120/70ZR17 R=200/60ZR17
- 軸間距離
- 1,469mm
- シート高
- 835mm
- 燃料タンク容量
- 16L
- 価格
- 344万2,000円