決勝当日は、見事な秋晴れ。日中はたまに半袖の方を見かけるほどで、この日は年に数回あるかないかの“絶好のレース日和”と呼ぶにふさわしい1日。それだけでテンションが上がる!
ZX-25R、耐久茶屋に初登場! 甲高い4気筒サウンドがやる気にさせる
実は、今回の耐久茶屋の4気筒クラスである“N250F”のエントリーは、RIDE HI RACING の1台だけだった(なので賞典外……)。2020年はZX-25Rデビューイヤー、もう少しエントリーがあるのかなぁと思いきや、少し残念。
ただ、単気筒、2気筒の中に1台だけ4気筒サウンドが響くのはかなり異質で目立っていたし、いろいろな方がピットに見に来てくれたのは良かった。
これまでずっと250cc/2気筒で参戦してきた僕らとしても新しい発見がたくさんある。ハンドリングはやはり安定感が光るし、想像以上にラインの自由度も高い。でもやはり使用するエンジン回転数はかなり高め。独特のエキゾーストノートが懐かしくもあり、新鮮でもある。
「予選は小川君ね。昨日乗ってないし。あとスタートライダーも」と原田さん。こんな感じで当日の作戦をサクサクと決める。
RIDE HIレーシング始動。今後、このメンバーで何か面白いことができたらいいなぁと思っている。バイクやレースを通じて仲間が増えていくのはとても楽しいし、嬉しい
原田さんのセットは、乗りやすさを重視
前日、原田さんと蛭田さんがセットしてくれた足周りはかなりソフトで、乗りやすい方向性。乱暴な操作をすると、サスペンションが底付きしてしまうから、丁寧な走りを心がける。
世界GPチャンピオンのサスセッテングはハード……そんなイメージは原田さんに当てはまらない。これは過去に乗ってきたすべてのレーサーに共通していること。
「一発タイムが出るセットはつくれるけど、つくっても意味がないよね。それに耐久レースは、3人が乗りやすいことが大切。蛭田さんのタイムが上がると嬉しいし、そんなセットアップをしていかないと」と原田さん。
予選でタイヤを減らしたくなかったので、10周を回って1分10秒873(以下、タイムは1分を省略)を記録、29番グリッドからスタートとなった。
今回、耐久茶屋には61チームがエントリーしており、上位40台が2.5時間の決勝に進むことができ、41位から61位は1.5時間の耐久レースに進むことになる。予選トップタイムはすでに熟成の域にあるCBR250RRを駆る宇川 徹さんが記録した5秒896(賞典外)。は、速い……。
決勝はスタートライダーの僕が40分→原田さん40分→給油して蛭田さん30分→原田さん40分の作戦。
ルマン式スタートは、鈴鹿4耐以来かも……。しかもマシンを支えてくれているのは、原田さん。なんだかとても恐縮である。
でも耐久レースはコツコツ走れば上位に進出できる。僕はスタートから40分を担当。大体疲れきって身体の力が抜けてきた後半にタイムが安定してくるもので、ベストタイムは9秒850だった。
スタートはルマン式。安全を考慮して、20台を1グループにして2回に分けてスタートする。それでもスタート直後は気をつけて走りたい
世界GPチャンピオンの走りを間近で見てほしい
そして原田さんに交代。交代直後に9秒250をマーク。コンスタントに9秒台で周回を重ねていく。
「原田さん写真、撮りにくいなぁ。イン側に入ってグリッと向きを変えていくし……」とカメラマンの柴田さん。そう、抜くときに迷いがなく、完全にマシンがコントロール下にある感じ。この走りを多くの参加者の方々に見てほしいのだ。
原田哲也さんと同じレースに出られる……僕らが出るレースをそんな夢のような舞台にしたいし、参加者の方には「原田哲也に抜かれた……抜いた!」と自慢してほしいとも思う。
「とにかく綺麗。無駄がなくスムーズ」これは原田さんの走りを見た、僕と蛭田さんの意見。まったく力を使っていないかのような理想的な走りだ。原田さんと同じチームで走っていることはとても幸せだけれど、たまに特等席から原田さんの走りを見ている一緒に走っている皆さんが羨ましいと思うこともある。
この日のために毎日筋トレ! 68歳の蛭田さんが激走
給油して原田さんから蛭田さんにライダー交代。「小川が9秒台に入れるからプレッシャーがぁ……ホンマアカンで〜」と蛭田さん。
それでも68歳! の蛭田さんのアベレージはとても良い。序盤こそ13秒台だったが、程なく12秒台に突入。ピットは盛り上がった。「タイム上がってきたし、ちょっと周回数増やしちゃおうよ……」と原田さん。自らサインボードの数字を変えていく……。
サインボードの残りタイムを減らさず、5〜6周は周回数を増やしたと思う。しかし、それに応えるように蛭田さんは11秒834を記録! 「オォー!!!!」ピットが沸き立つ!
戻ってきた蛭田さんは満面の笑み。
原田さんが最終ラップにベストタイムを更新!
最後は原田さんに託す。タイヤも減ってきた最終スティントにもかかわらずタイムは安定していて、8秒後半から9秒前半で周回。少しずつ順位も上げていく。
それにしても原田さんの走りはいつまでも見ていられるほど気持ちがいい。元世界GPチャンピオンだから当たり前かもしれないけれど、オーラがあるのだ。
そして、なんと最終ラップにベストタイムを更新! 8秒507を記録し、15位でチェッカーを受けた。
15位でチェッカー!
最終スティントは原田さん。しかも原田さんはこの周にベストラップを記録してピットを沸かせた。集中力を切らさず、最後まで全力で走る!
とても順調に2.5時間を戦い、大満足。全員が「楽しかったぁ!」を連発した。
「蛭田さん、タイムアップしたの僕が周回数増やしたからですからね」と笑いながら原田さんが言う。
「残り時間が一桁になってからなかなか減らないから、おかしいと思ったわぁ」と蛭田さん。
チームは笑いの渦に包まれる。
このチームの雰囲気は、年々良くなって行っているような気がする−−。
ほぼ予定通りで進行
レース進行をしてくれているライター伊藤さんが立てた作戦。ライダー入れ替えはあったが、ほぼこの通りに進行。こんなに順調にゴールできたのは初めてかも……
小川 勤 ベストタイム(9秒850)
RIDE HI編集長/僕の背後につけるのは♯67 宇川 徹さん。この後、ズバッと抜かれる。でも、特等席からプロの走りを見られるのが嬉しい
原田哲也 ベストタイム(8秒507)
元世界GP 250ccクラスチャンピオン/まるで参加者に見せるように丁寧に走る原田さん。現役時代を彷彿させるリラックスしたフォームが美しい
蛭田 貢 ベストタイム(11秒834)
マジカルレーシング代表/レースのために身体を鍛える68歳。もちろんカウリングは蛭田さんの手によるもの。長く乗るためにツナギはエアバッグ入りだ
さあ、来年に向け再始動!
最後に、いつも完璧な整備、パーツの調律をしてくれるMSセーリング代表の竹内さんに感謝。竹内さんが整備してくれたバイクは、本当に安心感が高いのだ。
そして急ピッチで部品を間に合わせてくれたスポンサーの皆様、ピットクルーのけんさん、いつもレース進行してくれる伊藤さんにも感謝。
2020年はとりあえずカタチにした、という段階。今後、ZX-25Rの可能性を追求すべく、ECUやサスペンション、ファイナルなどを詰めていきたい。
2021年はもう少しマシンを仕上げて、耐久茶屋に出たいと思っている。
そしてもっと4気筒らしさをさらにアピールしたい!
2021年は、できたら4気筒談義ができる仲間が増えているといいなぁ〜。
RIDE HI No.3(2021年2月1日発売)では原田さんの走りの秘密を、僕や蛭田さんと比較しながら解説していきたいと思っているのでお楽しみに。