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カスタム&パーツ
KAWASAKI Z1
BULL DOCK

【ブルドック × カワサキZ1-R】カワサキZはどこまで進化する!? その答えはブルドックが持っている

Photos:
折原弘之,柴田 直行

50年近く前に作られたバイクがいまだに逆輸入で帰国し、現役で走っている。それはZに愛情を注ぎ続けるショップやコンストラクターがあるからで、ここで紹介するブルドックは、パフォーマンス系カスタムZを牽引する存在である

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Base Model

Z1-R(D1型/1978年)。流線形のZ1000をベースに、直線的なカフェレーサースタイルや4-1集合を装備した最初の“角Z”

最新パーツをしっかり機能させる車体&エンジンづくり

これまでにブルドックが作ったZ1やMk・Ⅱ、ローソンレプリカなどのカスタムZに10台以上乗ってきた。しかし、そのどれもに「古いバイクだからこんなモン……」、という妥協はなく、ベース車両が40〜50年前のものとは思えない仕上がりだった。
ここで紹介するZ1Rは、ブルドック代表の和久井 維彦さんがショップオープン時から仕上げてきた実験機。このZ1Rで確証が取れたことをコンプリートマシンにフィードバックしていくのがブルドックのスタイルである。
僕もこのZ1Rは15年ほど前からその進化をずっと見てきた。最初は当然ながら試行錯誤のカスタムだったが、近年は“長く乗れるZ”のノウハウを確立。今はそのノウハウをさらに昇華させ、Zがどこまで行けるか、その可能性を追求しているようにも見える。
ブルドックの凄いところはカスタムペイントやフレームのカーボン巻き加工以外は、すべて自社で行っていること。コンプリート車はエンジンもオーバーホールするわけだが、通常は内燃機ショップに出すボーリングやヘッド面研などの作業もすべて自社で行う。様々な治具を揃え、複雑な加工もシステム化。フレーム加工なども同様の手法で行っている。
車体姿勢やサスペンションのセットアップにも貪欲で、良く動く足周りは和久井さんが走りながら導き出してきたものだ。

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ブルドックのコンプリートマシンであるGT-Mは独特のオーラを発揮。Zと最新パーツの融合はとても力強く、存在感も抜群

エンジンを油冷化するためにクランクケースを3基も廃棄……

1,260cc、150psを発揮するエンジンレスポンスは凄まじい。ブリッピングするだけで、フライホイールやクランクを軽くしているのがわかる。走り出すと、しっかりと後輪が路面を掴む。スロットルを開けるとZには似合わない加速を披露。6,000rpmを超えてもまだまだ回ろうとするZのエンジンは、かなり異質だ。こんなに元気なZを僕は知らない。

そうかと思うと、低中速を繋ぐ走りにもフレキシブルに対応。キャブレターの燃調の濃い感じや独特のレスポンス、さらに回していくとハイカムに乗っていく感じは、今のバイクにはないチューンドエンジンならではの感性で、とても新鮮だ。

エンジンは、Z1-Rのクランクケースを使用し、腰上をJ系にコンバート。オリジナルのピスタルレーシング製φ78mm鍛造ピストンで排気量は1,260cc。カムシャフトは作用角の大きなAPE製をIN側に、EX側はWEB製でともにST3仕様。バルブはIN側にゼファー1100用、EX側はGPz1100F用を加工してビッグバルブ化し、ポートも拡大している。

さらにピストンクーリングのオイルジェットを新設。GSX-Rの純正ノズルを、加工したクランクケースにセットしてピストン裏にオイルを噴射して冷却するが、最適なノズル位置を得るためにケースを3基も廃棄したという。文字にすると簡単に見えるが、アイデアを実践し効果を得るまで検証する行動力は他の追従を許さない。

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排気量を1,260ccまでアップ。Zエンジンはどこまでいけるか? 和久井さんの実験機は日々進化中だ

長く乗れるZ、いま楽しめるZであるコンプリートマシンには保証もつく

このエンジンに合わせてフレームは、通常の補強以外にカーボンを巻き剛性をアップ。バンク角を稼ぐためにエンジン搭載位置も上げている。足周りを見るとわかるが、ブルドックのカスタムスタイルは、Zと最新パーツの融合にある。そしてそのすべてを調律し、ハイグリップタイヤを履きこなす。タイヤと路面が張りついているような安心感は、空冷Zがこんなパフォーマンスを見せるなんて! と感動するしかない。

それにしても日々のコンプリートマシン製作に追われる中、ひたすらZを探究する和久井さんの姿勢は凄い。製作するパーツを見ても、話していてもそうだが、本当にZが好きなんだなぁと関心する。

このZ1Rはブルドックの最高峰カスタム。もちろんベース車両から相談に乗ってくれるし、もっとオーソドックスなカスタムオーダーも可能だ。“一生乗れるZが欲しい”そんな憧れをブルドックで叶えてみてはいかがだろう。

ちなみにブルドックが手掛けるコンプリート「GT-M(Genuine Turning Machine)」は、“正真正銘の”や“純種の”という意味のGenuineの名の通り、旧車やカスタム車のトラブルがつきもの、という既成概念を完全に覆す。長く安全に乗るために、エンジンのフルオーバーホールやフレームのチェック、電装パーツのリフレッシュを必ず行い、各種加工作業も一貫して社内で行う。そんなGTMの信頼性の高さは、「1年間または5,000km走行保証」にも表れている。

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カワサキZ用に5速及び6速のクロスミッションを開発。また、写真は吐出量を増した削り出しのオイルポンプだが、純正と同量のポンプも製作。チューニング時はもちろん、永くZに乗り続けるためのレストアにも必須なアイテムだ

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補強や加工を施したフレームやスイングアームは、表面にドライカーボンを圧着成型して剛性を向上。オリジナルのライディングステップにはクイックシフターも装備し、現行技術を積極的に取り入れる

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燃料タンクはアルミ製。耐久レーサーを彷彿させるエアプレーンキャップを装備。サイドカバー一体のFRP製シングルシート。座面はグリップの良いスプリームシートだ

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エクステリアパーツも同社のオリジナル製品。Z1-Rのスタイルをリスペクトしつつ、低く構えたビキニカウル等で、より精悍なフォルムに仕上げる

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メーターはスタックのアナログ式回転計+デジタルダッシュのST700SRに燃料計をセット

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大胆に肉抜きしたトップブリッジに、ビチューボのステアリングダンパーをセット。φ43mmのナイトロン製正立フォークを支えるステムキットもオリジナル。カラーの入れ替えで、30~35mmのオフセット量を選択できる

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ブレーキ&クラッチマスターシリンダーは可変レシオのゲイルスピード「エラボレートVRE」

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同社の5角目の地スイングアームに、Z専用設計のナイトロン製リヤショックをセット

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ワイドタイヤ対応でオフセットしたスプロケットを支えるアウトボード。クラッチは油圧化

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全域での出力向上を狙い、キャブレターはヨシムラTMR-MJNのデュアルスタック仕様を装備

協力/ ブルドック
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