img_article_detail_01

Q.怖さや不安が続くスランプに陥ったら?【教えてネモケン115】

oshiete-nemoken_115_20220905_main.jpg

怖さや不安に打ち勝つ策があったら教えてください!

A.怖さや不安はあなたの警戒心が正常な証拠。信じられる自分の操作で安心を積み上げましょう!

怖さや不安がなかったら、どんなに楽しいか……でもその先には最悪の結果しかありません

oshiete-nemoken_115_20220905_01
oshiete-nemoken_115_20220905_02

うっかり足を出すタイミングが遅れて立ちゴケ……下りのヘアピンで砂にフロントがとられ不覚のスリップダウン……ちょっと痛いくらいで怪我もしてないけれど、そんなことがきっかけで10°傾けてもコケそうな気がして怖さが先に立つようになってしまい、どうにも楽しく乗れない。
そもそも「ビビリー」で仲間とのツーリングはいつもテールエンダー、気持ちよさそうにコーナーへ吸い込まれていくライダーを見るたび、怖さや不安がないあんな走りがしてみたい。
そんな「苦手意識」から解放されたい、そう思っているライダーの多さは、はかりしれません。
ボクもバイクに乗りはじめたころは、しょっちゅうそんな風に思ってました。
でも長く乗り続けるうちに、怖さや不安のない状態などあったら大変で、瞬く間に事故って大怪我をするか命を落としてしまう、そんなの理想でも何でもないんだということがわかるようになったのです。
実際、10代で腕自慢だった仲間で、大怪我をしてバイクから降りたり、家族や仕事の上司から禁止され乗らなくなった例も少なくありませんでした。
怖さや不安は、自己防衛本能が正常に働いている証拠、それに蛮勇を奮う、つまり恐怖を我慢して突っ込んでいくライディングなど、偶然うまくいったとしてもテクニックではないから身につかない、基本は安心できて楽しめるライディング、この当たり前のことがつい忘れがちになります。
そして世界のレースから様々なツーリングを経験してきたボクも、何となく怖かったり不安に陥ることはいまでもあります。
確かにイイ気持ちはしません。でも慣れっこで良い加減になってたライディングを見直すチャンスと思い直して、ひとつひとつの操作をもういちど確認しています。

不安は我慢ではなく、自分で加える操作を感じながらリハビリが一番!

それではいくつか対処法を例としてあげておきましょう。まずちょっとでも車体を傾けると滑ってしまいそうに思ってしまうときは、曲がる=リーンするという概念を棄ててください。
まず車体を真っ直ぐに、そして左へ曲がるならこぶしひとつお尻を左へズラし、体重がまっすぐリヤタイヤに載るよう身体のチカラを抜いてシートへの面圧を高めておきます。

oshiete-nemoken_115_20220905_03_01

次にアウト側、つまり右の膝頭をニーグリップ部分でクイッとプッシュしてみます。するとカクッとほとんどバンクしていないのに、くの字を描く曲がり方ができます。
これで左折からそこそこのカーブを、速度さえ抑えておけば進入するときに曲がれる安心感というか自信がつくはず。
ビギナーが雨の日の濡れた路面で、どうしたらよいかフリーズしちゃった状況でも使える奥の手なので、どこかで試しておいてください。

oshiete-nemoken_115_20220905_04

次にブレーキをかけると、ABS(アンチロックブレーキシステム)が働けばロックはしないとわかっていても、砂に乗ったときのように足下をとられてスリップダウン……そんなトラウマ状態だと、怖くてブレーキかけられませんよね。
対処法は、ブレーキをかけるとき常に一定の入力にしないで、必ずジワッと増やしたりスーッと緩めたりをしながら操作します。
怖々かけるのに、そんな入力を強めたりしたらさらに恐怖だからできるわけない……そう思いがちですが、実はこれ真逆で、一定圧のほうが何か起きるのを唯々待つ身になってしまい、怖さが先に立つと益々かけられなくなるという悪循環に陥ります。

oshiete-nemoken_115_20220905_05
oshiete-nemoken_115_20220905_06
oshiete-nemoken_115_20220905_07_01
oshiete-nemoken_115_20220905_08

そこで真っ直ぐな道で周囲に交通のない状況を選び、フロントブレーキはイラストのように親指を支点にレバー操作すると、実は両側から挟む動作になるので、外側2本で支点をつくり人差し指と中指をレバーを上から押す感じで手前に滑り込ませる、支点が明確だとブレーキ入力の強弱が如実に伝わってくるのをます体験してください。
リヤブレーキもペダルのつま先にチカラを入れた踏み方だと、土踏まずが浮いてしまい支点を失うため入力の強弱がまったくわかりません。そこで踵や土踏まずを踏みつけるようにしながら、一緒にペダルを踏むと意外なほど入力の強弱を感じることができます。その結果、どこがペダルの遊びでどこからが入力できる範囲なのかがわかるため、ABSを効かせることなくビックリするほど制動距離が短縮できます。
そして何より、この常に強弱を加えながら操作することで、何かあったらすぐ緩める感性が身につき、実際にはそこまでのことは起きないのですが、唯々何が起きるかわからず受け身でいた状況とは心理的にまったく異なる、いわば自信に近いココロが芽生えます。
次にちょっとでも余裕がでてきたら、直線でも緩いカーブをほんの少し車体が傾いた状態でも、加速をするときにブレーキと同じように、一定にスロットル開度を維持する操作ではなく、ジワッと捻りながらトルクでタイヤが潰れるイメージをしながら加速するようにします。

oshiete-nemoken_115_20220905_09

とにかく低い回転域で操作するのが基本。アイドリングより少し上の回転域であれば、多少乱暴にスロットル開度が大き過ぎても、突然ダッシュすることは絶対にあり得ません。
できれば矢継ぎ早にシフトアップすれば、後輪が路面をたっぷり掴んで安定した加速状態が得られるのですが、少し高度なテクニックなのでまずはグイッとトルクが出た感じがあれば、そこでスロットルは戻して通常のシフトアップ操作をして、またグイッとトルクでタイヤが潰れる感じにするのを繰り返します。
こうすることで、加速もブレーキも操作しているのはライダー自身で、やり過ぎたら自分でやめられる……そんな関係を愛車との間に構築できることになり、この自分で操っている状態こそが愛車との信頼関係を築いていくのに欠かせない要素であるのを自覚していける筈です。
もちろん焦ることはありません。むしろ結果がすぐに手に入らないことで諦めたり苛立ったりしては、元も子もありません。
長く乗ってこそ、わかってくるバイクライフの奥深い楽しみ。時間がかかることも、趣味として楽しめる時間がたっぷりあると思いましょう。

Photos:
iStack(azgek),藤原 らんか