ヨーロッパで流行ったスーパーシングルにイタリアヤマハが企画生産!

ヤマハでシングル(単気筒)といえば、トラディショナルなSR400/500にシングルのスポーツで名を馳せたこだわりの人気機種SRX400/600。
そのSRX400/600も、1990年に第2世代が誕生、まさにスーパースポーツといえる高いレベルの新しいシャシーや足回りだったが、ファンは初代の2本サスを好み、ハイパフォーマンスなイメージは相応しくないと人気は出なかった。
それでもヤマハはこのSRX第2世代が目指していたスーパーシングルの次世代を、1995年に投入したのだ。
ただそれは日本向けではなく、ヨーロッパはイタリアのベルガルダ・ヤマハで企画され生産も現地、僅かに逆輸入車として日本上陸も果たしていたが、ほとんどのファンはその存在すら知らなかった。



エンジンはXTZ660テネレ用(ボア×ストローク:100×84mm)をベースにチューン。
659cc水冷SOHCはヤマハらしく5バルブ単気筒で、1990年にモデルチェンジした2世代目のSRX600と同じく、オイルタンクをエンジン前方の左下へマウントするレイアウト。
最高出力は48ps/6,500rpm、5.5kgm/5,000rpmと、レッドゾーンは7,000rpmからだが実質中速域にパンチのある一般のワインディングで醍醐味が味わえるチューン。
フレームはアルミ鋼板で必要強度をバランスして得やすいデルタボックスと超豪華、スイングアームは当時の市販レーサーと同仕様でレース出場を意識したまさにスーパースポーツのカテゴリー構成となっていた。
ホイールベースは1,410mmで乾燥重量が159kgのいかにもポテンシャルの高い戦闘機ルックス。


1990年代、ヨーロッパやアメリカでも、シングル(単気筒)だけで競うSOS(Sound Of Singles サウンドオブシングル)が一躍人気となりはじめた。
それはスーパーシングル、もしくはスーパーモノと呼ばれるようになり、ヨーロッパ選手権までエスカレート、ビモータは1993年にBMWのF650単気筒を搭載したBB-1を発表、ドゥカティも市販レーサーのスーパーモノを投入するほど熱気を帯びていた。
そんな海外でのスーパーモノ(シングル)へ実はヤマハも参入、まだ手探り状態だったがその延長線上にこのSZR660があったのだ。


この気運が日本へ届かなかったわけではない。
忘れもしない1995年の東京モーターショーで、ホンダは644というスーパーモノを参考出品、イタリアと日本による闘いの火ぶたが切られるのか、といった期待に包まれていた。
しかし結局、ホンダは644の製品化はせず、ビモータBB-1は短命、ドゥカティも市販レーサーのみの展開に留まり、ヤマハのSZR660も1997年で生産されなくなってしまった。
常に操るために工夫が必要で、ライダーの感性でポテンシャルが大きく変わってくるビッグシングル……
その趣味性の高さにハマるファンがまた増える兆しを期待したい。




