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このバイクに注目
SUZUKI
GSX-R750
1988model

油冷GSX-Rのもうひとつの美学、ツインチューブに迎合せずベストハンドリングを最優先!?【このバイクに注目】

Photos:
スズキ

油冷と軽量化にエンジン幅よりナロウなフレームにこだわる

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GSX-R750R 1989年

スズキが他にない独創性を貫き熱いファンを生んだ油冷GSX-R。そこには冷却方式だけでなく、進化のプロセスで初代にできなかった設計時から基本を詰めたトータルな完成度を高めるエンジニア魂が脈々と注ぎ込まれていた。
油冷という画期的な仕組みの影に隠れがちだが、当時はどのメーカーより徹底してハンドリングを追求した結果、GSX-R750/1100系列ツインチューブに移行せずダブルクレードルを守り続けていたのだ。

ワークスマシンに乗ってみたい、そんなユーザーの夢を実現しようとスタートしたプロジェクトは、油冷エンジンにアルミのダブルクレードルと量産市販車の常識を覆す製品化だった

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GSX-R750 1985年

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燃焼室外壁へオイルをジェット噴射、境界層を吹き飛ばして冷却

’85年にデビューした、潤滑オイルを燃焼室の外壁へ噴射して熱を吹き飛ばす画期的な冷却方式のGSX-R750は、水冷化をせず徹底した軽量化でフレームもアルミ角断面のダブルクレードルと、’83年から活躍していたスズキGS1000ベースの世界選手権耐久レース用ワークスマシンのレプリカを目指していた。
その結果、フルカウル装備でも179kgと当時の400ccクラス並みの画期的に軽量なマシンに仕上がったのだ。

このワークスマシンに乗ってみたいユーザーの夢を具現化してエンジニアたちの当初の目標へ到達したものの、すべてに経験のない画期的な初の試みだらけで、やり残したことも少なくなかった。

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限定車GSX-R750Rを1986年に、また排気量をヨーロッパでフラッグシップとして求められたGSX-R1100ではスイングアームピボット付近の剛性を高めるなど、次なる構築の展開がはじまっていたのだ。

軽量なハンドリングになるほどシビアになるアライメント追求、
タイヤメーカーのプロファイルに合わせた重心位置など徹底したハンドリングに、幅広なツインチューブはあり得なかった!?

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GSX-R750 1988年

そうしたフィードバックを一気に反映した新しいGSX-R750が1988年にデビュー。洗練されたルックスは、どこか男気を感じさせる旧デザインに魅力を感じるファンも多いが、テクノロジー的に性能も含め完成度のレベルが格段に高まり、世界でベストハンドリングの評価を得た傑作マシンとなった。

当時は既に他メーカーが、いわゆるアルミのツインチューブ・フレームに次々と切り替わり、残るはスズキのみだったのが、またしてもダブルクレードルを踏襲したのに驚いたのも事実。
しかしスズキはツインチューブが、ステアリングヘッドからスイングアームのピボットまでを一直線で結ぶため、並列4気筒はシリンダー幅の両側を囲むカタチとなり、どんなに軽量化しようとこのフレームが外に張り出している質量が、リーンなどマシンの運動性を妨げると結論づけていた。

ダブルクレードルなら、エンジンを上下で囲むレイアウト。つまりエンジン幅よりフレーム幅を狭くできる。
このレイアウトでニュートラルで自然なハンドリングを得てきた歴史に倣い、エンジニアはツインチューブを完全否定していたのだ。

しかもラジアル・タイヤがまさに進化の初期段階で一気に改善されるタイミングを察知、ミシュランにタイヤ・プロファイル(断面)から理想の重心位置やキャスター角にトレール量などアライメントを緻密に詰め、まさにハンドリングの完璧さで他に圧倒的な差をつけていたのだ。

とはいえ、ライバルの水冷化はコンパクトさを増し、エンジンのレイアウトも変わりながらツインチューブ化にフィットしやすい進化をみせていた。
排気ガス規制を含め、発熱で不利な油冷も劣勢となり、独創性の高いGSX-Rは他に追従せざるを得なくなったが、異なる発想で新たな領域にチャレンジする情熱の高さに、最新の国産バイクが何を失いつつあるのかを垣間みる思いだ。

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ボア×ストロークを元に戻したり足回りで大改革とルックスは変わらないが変更点が多かった1990年の最後の油冷

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1992年には水冷化が及んだものの、フレームは依然として幅の狭いダブルクレードルを踏襲

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1996モデルから水冷化だけでなく遂にツインチューブフレームを採用