水冷化され基本部分を大改革したボクサー、さらにドライバビリティの進化で逞しさアップ!
ツーリングでワインディングを駆け抜けるスポーツ性と、長時間全天候型でライダーをサポートする安心感
このバイクに注目で以前にご紹介したBMWのR1250R。水平対向ツインのボクサーエンジンでネイキッドのベーシックモデルだった“R”バージョンに対し、ここでピックアップするのは“RS”。
BMWのWEBページではSPORTカテゴリーに属し、S 1000 RRやHP4 RACEと肩を並べているが、もちろんスーパースポーツではなく、ツーリングモデルでもスポーツ性が高い位置づけだ。
わかりやすく説明すると、スーパースポーツでは辛くなる距離を何泊かでツーリングするとき、ワインディングでコーナリングの醍醐味を楽しめるパフォーマンスが、スーパースポーツを経験したキャリアでも納得できるレベルを求めるライダー向きというモデル。
長距離や長時間のツーリングを前提に、BMWのラインナップであればRTやGTのような快適さを優先すると、さすがにコーナーを攻めた走りは不向きになる。それが我慢ならないコーナリング好きなライダーのニーズへ対応しているというワケだ。
ワインディングでRSに抜かれたら、ムキになって追いかけないほうが身のためだ
実はRSを4台も乗り継いだオーナー経験があるから言えるのだが、サスペンションストロークも長く、ボクサーのフラットなトルクのイメージから、スーパースポーツの足許にも及ばないパフォーマンスと思われがちかも知れない。しかしブラインドコーナーが連続するようなワインディングでは、スーパースポーツよりRSのほうがマージンタップリに醍醐味のある走りが可能になる。
迫り来るコーナーがどんな曲率なのか、カーブへ飛び込んでから対応しても余裕で何とかできるポテンシャル……とにかくどうにでも許容してしまうこの実力は、オーナーでなければ想像すらつかないだろう。
という水平対向ツインのボクサー、伝統的なOHV時代からOHCとインジェクション化で'93年から一気に近代化されたR1100系から1150系を経て、2013年で水冷化された際に基本的なところが再構築された大改革があったのを、歴代ボクサーのオーナー含め意外とご存じないようだ。
吸排気の方向が後ろ→前だったのが、90年目にして上から下へ大改革
その違いは大きくふたつあって、ひとつが水平対向の横へ突き出たシリンダーヘッドへ、上から吸気して排気系が下側へ抜けるという吸排気レイアウトの変更。そもそもボクサーは、初代R32(1923年)から燃焼室に対しライダーの足許側、つまりシリンダーの後ろ側から吸気して前方へ排気する構造が90年間も続いてきた。これが上下に貫くようなレイアウトになった狙いは吸気/排気のストレート化だ。
これで、そもそもビッグボアでワイルドなレスポンスで強面ライダーに人気だった新世代ボクサーに、さらなるパンチ力が加わった。どんなにハイパーなスーパーバイクでも、中速域以下からの全閉→全開ダッシュのエネルギッシュさは、新世代ボクサーに軍配が挙がるというファンが多いほどのパフォーマンスアップ。
縦置きクランク特有の反トルクでグラッとくるのが抑えられた
そしてもうひとつが、シャフト駆動系がスイングアームの進行右側に貫通していたのが、反対の進行左側へ移ったこと。これは停車時の空吹かし(ブリッピング)などで左右の回転方向へグラッときていたのを、この縦置きクランクシャフト特有の反トルクを打ち消すため、クランク直下でクラッチを逆回転させているからだ。
つまりこの逆回転シャフトが介在するため、後輪で90°駆動の方向転換をしている駆動シャフトが、スイングアーム左側を貫通する位置関係となった。そのため走行中の反トルクによる左右のコーナリングで違うフィーリングとなるのも抑えられている。
同時にこの前方へ移動したクラッチも、以前の乾式から一般的なエンジンオイルに浸った湿式多板式になり、半クラッチなどスムーズで扱いやすい特性が得られるようになった。
ダイナミックESAサスペンションの乗りやすさとリスク回避も得難いメリット
いうまでもないことだが、BMWの強みでもある、シリンダーが水平対向というレイアウトで、クランクシャフトより上に重量質量が嵩張らない重心の低さは、高速道路での安定性はもとより、路面が旧くて粗いバンピーなワインディングも安定感を保ち、ライダーを不安にさせない頼もしさで長時間でも疲れない。
さらにお得意の電子制御技術によるアドバンテージの高さで、走りながら走行条件によってダイナミックESAサスペンションへ自動調整まかせにできるのも大きな強みだ。それもこれも、世界で最も開発に時間と距離を費やす姿勢によって積み上げられた実績で、BMWならではの強みでもある。
もちろん、ツーリングバイク専業メーカー時代もあったメーカーだけに、なぜ長時間快適なのかなどのノウハウも半端無い。そしてツーリング系のパニアケースに代表されるオプションパーツの豊富さも魅力。コーナリングの醍醐味と旅バイクとの融合……他ではみつけにくい存在だ。
水冷から縦置きクランクシャフトの下に、クラッチが逆回転する構成となった。これで急にスロットルを大きく開けたとき、車体ごと捻るように揺すられた反トルクはかなり収まり扱いやすくなっている
シリンダーの上から吸気し、下から排気。ヘッドを水冷化し、低中速と高回転でカムシャフトを使い分けるシフトカムを採用。これによりどの回転域からも鋭いダッシュが可能になっている
SPEC
- 最大トルク
- 143Nm/6,250rpm
- 変速機
- 6速リターン
- フレーム
- ダブルクレードル
- 車両重量
- 250kg
- タイヤサイズ
- F=120/70ZR17 R=180/55ZR17
- 全長/全幅/全高
- 2,200/790/1,255~1,340mm
- 燃料タンク容量
- 18L
- 価格
- 212万7,000円~