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シフトダウンのタイミングはどれが正解?【ライドナレッジ085】

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RIDE HI 編集部,藤原 らんか

強いエンブレ、いつでもパワーバンドでスタンバイ、昔流儀はカン高い戦闘的な空吹かしが定番、
真反対にエンブレ邪魔扱い?する新しい流儀とどっちが正しい

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シフトダウン……経験が浅いと、聞いただけで苦手意識に包まれてしまう。どうやるのが正解なのか、そもそも何のためなのか、でもカーブ手前でギヤを落とさないとエンジン回転が下がり過ぎてしまうので、とにかくひとつふたつギヤを落としておく。
そんなライダーにまず説明しておくと、30年以上前はエンジンを常に高い回転域に保つのが「乗れてる」ライダーと呼ばれていたのだ。
コーナーへ進入したら、次の加速でリヤタイヤが滑らんばかりにフルパワーを発揮できる臨戦態勢をキープするのが速く走る基本。
なので強いエンブレも利用できるので、高回転域を下回らないよう矢継ぎ早にギヤを落とす。しかし高回転域はギヤによる回転差が大きいため、繋がりが悪いと後輪がスキッドする。そこでこの回転差をスムーズに繋ぐためクラッチを切りスロットルを大きく捻って空吹かし(ブリッピング)でエンジン回転を上げておき、ギヤダウン後に繋いだ際、ショックがなければプロ級のワザということになる。
なので、コーナー手前の減速区間では、ブレーキングしながらウォン、ウォン、ウォンと吠えるようなエキゾーストノートを聞かせるシーンが必須で、憧れでもあったワケだ。
対して、最新ハイパーマシンの操り方は真反対。
そもそもエンジンブレーキが、回転域によって減速率が変わるのと、スリッパークラッチなどいきなりギヤを落としたときの回転差によるスキッドも抑える仕組みが前提とはいえ、そうしたライダーの思惑とは別に何か起きるのを嫌い、減速区間ではシフトダウンせずエンジン回転が落ちるのを待ってから、回転差の小さな領域でギヤを落とす……当然こうすればスムーズな操作になる。
そして何より、ハイパーエンジンは高回転のピーク域だけでなく、中速域からさらに低い回転域にまで、どこからでもトラクション可能な、扱いやすく路面をうまく蹴る力強いトルクを呼びだすことができる。
それは中速域でさえ、スロットル開度によってはリヤタイヤが滑りはじめるほど強力だ。
つまりコーナリング中に、スロットルの開け方を滑らないよう探りながら操るよりは、低い回転域の爆発間隔が広い効率良くグリップできる低回転域で、グイグイ開けていったほうが安定して強力に曲がれるということになる。
もう繰り返す必要はないかも知れないが、コーナーへの減速区間からコーナー出口まで、エンジンは高回転域にキープせず、低い回転域を使うのが賢い乗り方であるのは間違いない。

オートシフターやオートブリッパーで、チェンジペダルを踏むだけでシフトダウン可能な機種も増えている。
ただ状況によってはマニュアル操作のほうがタイミングをとれるメリットもある

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最新のスーパースポーツは、クラッチを切らずスロットルも戻さずにシフトアップできるオートシフターやクイックシフターと呼ばれる装備が標準化されつつある。
このメカニズムはシフトダウンも、オートブリッパーという空吹かしの介入を自動でするため、高回転域で懐かしいウォン、ウォン、ウォンもできるが、コーナーへ入ってから回転が高いのはスロットルをパーシャル(加速も減速もしないコンスタント・スロットル状態→クラッチを切ったままの旋回に近いので安定せず曲がり方も弱い)にせざるを得ず、トラクション区間がコーナー出口付近だけというデメリットだらけになるので、たまに遊びでやってみる程度に留めておくほうが良い。
ただ低い回転域だと、シフトペダルの感圧センサーのレスポンスが鈍かったりで、うまくギヤが変わらなかったりすることもある。
そうしたミスは、コーナリングをかなりスポイルするので、頻繁に起きるようであればマニュアル操作するのがお奨めだ。
もちろん、オートシフターやクイックシフターが装着されていないバイクでは、マニュアル操作しかないのだが、低い回転域で操作するだけで、シフトダウンは以外なほど難しくない。
コツは小さく素早く。スロットルを捻る右手も、ピクッとさせるだけ、もしくはブリッピングせずにシフトダウンしても、ほぼショックは感じないはず。クラッチレバーを僅か1cmも引けば、そんなショックの心配は皆無になる。
また怖々シフトダウンするよりはと、クラッチを切ってまとめて2~3速ギヤダウンして、半クラッチ気味にそうっと放して繋いでいるなら、どこかでこの小さく素早く、の操作を覚えてしまったほうが、ツーリングでの気疲れも減る。
そして、クラッチもミッションも、そうっと操作するほうが半クラッチ状態が頻繁だったり、回転差が大きい状態でガチャンとシフトすると負担が大きかったりするので、慣れるまで多少のショックはあっても機械的には負荷がグッと小さいのも知っておいて欲しい。
遠慮せず、小さく素早く、操作してコツを掴んでしまおう!

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